まどろみに溺れる


 夢には願望が現れることがある。この状況は正しくそれだ。
ふと人の気配を感じ現実へと引き戻される。
 ――いい所だったのに。そんな不満を抱きながら顔を上げると、目の前に居たのは夢の中でも酷く焦がれる彼女の姿。
「真澄くん、おはよう」
「……監督」
「ふふ、寝癖ついてる。よく眠れた?」
呑気に俺の髪を撫でる彼女に思わず顔が綻んだ。
「やっぱり、俺の目の前に居るアンタが、一番好き」
どうしたの? そう問いかけようとした彼女の唇を無理矢理に奪う。
奥底から湧き出て枯れる事を知らない欲望。それに従うのも、悪くない。
「ま、真澄くん。わたし用事が……」
「ダメ。まだ、離れたくない」
 この温もりが、泡のように弾けてしまう白昼夢では無い証拠になるのだろうか。



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