噂の転校生


不良120%のヤンキー高校にある変化が訪れた。
石矢魔女子をまとめあげた邦枝が女子全員を連れて遠征に出かけてから女が転校生してきたのだ。
それは肩に掛からない程の長さの髪にクリッとした瞳、華奢で細く長い脚を惜しみなく出している女だった。
女は1年の古市貴之の腕をとり、不良を見るたびに嬉しそうな声を出して興奮していた。不良とは無縁そうな女が何故、こんな時期に転校してきたのか……。普段なら我先にと話しかけに行く(絡みに行くと言うべきかもしれないが)不良たちだったが、それが容易にできない状況にあったのだ。


「あいつ、もしかして元カノじゃねーか?」

1人の不良がボソッと漏らした元カノという単語。これは椿の事を指す。
元カノ、それは椿がこちらに居た時のあだ名だった。


「元カノってもしかしてあれか?」
「ああ、男鹿の元カノだ」

勿論、椿は正真正銘の男であり、男鹿の女なんてことはまず無い話なのだが、これには深いわけがあった。

訳というか、誰かさんの言葉が原因と言うか。事の発端は椿らが中学1年生の時で、古市貴之が女と付き合えないということから始まった。
イケメンと言っても間違いでは無い古市だが、何故か付き合えない、若しくは付き合っても長続きしなかったのだ。
実はその原因は椿にあった。椿は容姿だけではなく女子力も高かったのだ。しかも椿は古市の事をとても慕っており、いつでも何処でも一緒に行動していた。女子より女子力がある男、古市にとってはそれだけの認識であったが、椿が女として生きていたあいだ、他の女子の目には古市と常に一緒にいる女子力の高い女にしか見えなかったらしい。


「広末椿に勝てる自信がない」

古市に関わった女が全員その言葉を口にしていた。
ある日、このままでは彼女が一生出来ないのではないかと考えた古市が、ある作戦にでた。15歳まで女を貫き通さないといけない椿の素性をバラすのではなく、椿を男鹿の彼女にしてしまえばいいのではないかと。
そうして実行された「椿は男鹿の彼女作戦」は見事成功し、古市の思惑以上の効果を発揮してしまったのだ。
中1の冬に椿が転校して、いなくなってからは「椿が男鹿に嫌気がして転校した」という噂が流れ、戻ってきた今、男鹿の元カノとして言われるようになったのだ。


「男鹿の元カノが帰ってきた」

  
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