初夜の攻防
「本当にいいのか?」
「う、ん」
ベッドでお互いに向かい合い座り合っているこの状況はだいぶ滑稽だ。彼女は口ではyesと言っているが瞳は不安そうに揺れている。唇はきゅっと結ばれていて、眉は下がっている。
こんな状態の彼女を今から抱け、という方が難しいんだが。
「別に今日じゃなくてもいいんだぞ。俺はナマエに無理はさせたくない」
「っ、…やだ。」
ぐっと握られた拳が解かれ俺の手に重ねられる。そんな可愛いことして分かってるのかこの子は。俺は深くため息をすると彼女を抱き寄せて背中をトントンと叩いてあやす。
「分かった。それだけ言うなら抱く。けど痛いとか嫌だとか思ったらすぐ言うんだぞ」
「わ、私、トレイ先輩なら何されても嫌じゃない、から。だから大丈夫」
あー、もうこの子は。無自覚でこういう事を言うところが心配になる。初めてなんだからちゃんと俺はセーブしなきゃならないのに。
「そういう事、俺以外の奴に言うんじゃないぞ」
こくりと頷いた彼女を腕から解放して肩に手を置き見つめ合う。どちらからともなく距離が近くなり、ちゅと唇が触れ合う。
柔らかくて食べてしまいたくなる唇に一気に気持ちが昂る。離れては重ねてを繰り返すと、まだ息の仕方が分からない彼女はだんだん息が上がってくる。
「…っはぁ。鼻で息をするんだ、前にも言ったろう?」
「はぁっ、はっ、はぁ、できてる、もん」
まだ序盤の序盤でこの感じだったら最後まで行けないだろう。数十分後の自分は生殺しを味わうのかと思うと悲しくなった。
「ナマエ、口開けて舌をだして」
「こ、こう?」
小さく口を開けてちろりと舌をだし首をかしげる彼女。その彼女の舌を攫い、口の中を一気に蹂躙する。ぢゅうっと吸ったり歯をなぞったりすると、びくっと方が揺れ俺の裾をぎゅっと掴まれる。
「はぅ、ん、、ふぁっ、せんぱ、、息がっ」
苦しそうに目をぎゅっと閉じているナマエに興奮する。もっともっと俺で染めたい。
キスをしてる時に眼鏡がときどき鼻に当たるのがもどかしくて、息継ぎで唇が離れたタイミングで外してサイドテーブルに置いた。
「何をじろじろ見てるんだ?」
「えっ、や、眼鏡外してるところあんまり見たことないから。…かっこいいなって」
「はぁ、あんまりそうやってしてると優しく出来なくなるからやめとけ」
「え、や、ごめんなさい…」
しゅんとするナマエの頭を優しく撫でて前髪を整えてやる。少し潤んだ瞳が俺を見上げて、嬉しそうに目を細める。ちゅっと触れるだけのキスをしてそっと優しくベッドに押し倒して彼女の上に覆いかぶさる。
「やめるなら今のうちだぞ。いいか?」
「さっきから何回も言ってるよ、大丈夫だって。だから…抱いて?」
彼女もさることながら自分も緊張していることに今更気づく。きちんとリードしてやらなきゃならないが、いかんせん処女を抱くのは初めてだから勝手が分からない。もしもの時のためにサイドテーブルの引き出しの中にはゴムだけでなく、ローションなどを用意している。
これに頼ることなく出来たらいいんだがな、と引き出しをちらりと見てそう思う。組み敷いた彼女の手を掴み指を絡めシーツに押し付けて、先ほどのような激しいキスを送った。