好きが溢れて


阿修くんが大好きだ。
可愛い笑顔も、ときどき見せる大人っぽい表情も、スイーツを食べる時の幸せそうな顔も、全部、大好き。
何をしても可愛いし、かっこいい。 とにかく大好き。


自分でもわかりやすく態度に出てると思ってる。
仕事で話し掛けられた後には、にやけが止まらない。うっかり金城さんに見られて、気持ちわるっと言われたことも記憶に新しい。愛染さんはなんとも言えない苦笑いのような表情をしていた。


誰かに語りたくて我慢しきれなくなると、ゆっちーやはるぴょんに話を聞いてもらう。

阿修くんがかわいい、もう無理、耐えられない、食べちゃいたい

そんな話を事務所の一室で延々聞いてもらう。その度に適当に相槌を打って話を聞いてくれる2人にはとても感謝してる。


今日も今日とて、2人に話を聞いてもらっていた。段々落ち着いてきたのでお開きになるところだった。いつもありがとう。そう伝えて仕事に戻ろうとしていたのに、元気よく阿修くんが部屋に飛び込んでくる。

やっほー!ハルにユヅにさとうちゃん?3人で集まって何してるのー?僕も混ぜてー!

何をしていたのか大体の検討がついているであろう金城さんと愛染さんが、阿修くんに続いて入ってきて、自分たちは止めました、と視線で訴えてくる。

いい機会だから言っちゃいなよ、横でヒソヒソ話し合っていたゆっちーとはるぴょん耳打ちしてくる。

そんな無責任なこと言われても困る。思っていることが全て口から出てしまえば、ドン引きされてしまうかもしれない。もうあの笑顔を私には向けてくれないかもしれない。蔑むような目で見られてしまうかもしれない。いや、それはそれでおいしい?危ない考えに至ったところで阿修くんが声をかけてくる。

もしかして、僕に言えないようなことしてたの?余計気になるー!

阿修くん、言えないようなことって何を想像してるの?阿修くんにあらぬ勘違いをされるのは嫌。ここは慎重に言葉を選んで伝えるべきかも。そう考えて必死に言葉を探す。

あのね、2人と阿修くんかっこいいね、それにかわいいよね。大好きって話をしてたの。

割といい感じに伝えられたんじゃないか?これなら誤解はされないだろうし、ソフトな感じに好意を伝えられたのでは?そう思っていると阿修くんから思いもよらない言葉が返ってくる。

なんだ、そんなことかー。僕も大好きだよ!


…ありがとう、阿修くん。きっと私の好きとは違うものなんだろうけど、阿修くんからそんな言葉を聞けただけで幸せです。

ほんと?ありがとう。私もう仕事に戻らなきゃだから先に行くね。みなさんお疲れ様です。

出来るだけ自然に、明るい声色を心掛けて答える。
顔がにやけてしまわないように唇を噛みながらドアに向かう。ドアの近くにいた愛染さんがよかったね、と声を掛けてドアを開けてくれる。ありがとうございます。と返して急いで自分のデスクに向かう。
気を抜いたらすぐにだらしない顔になってしまいそう。仕事が終わったらもう一回2人を招集して話を聞いてもらわなきゃ。そうしないと一晩中阿修くんの『大好きだよ』がリピートされて眠れそうにない。



終業後、2人に連絡しようとJOINを開くと、珍しく金城さんからメッセージがきていた。
部屋にいるときはまだマシな顔だったぞ、という謎のフォローだった。




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