罪を喰らう22
 七星と会えないまま時間が過ぎ、あの部屋を出た名前は降谷と会う前の生活に戻った。
 相変わらず両親のいない広いマンションに住み、購入した弁当や外食で食事を済ませる日々。常に心ここに在らずでぼうっとしていて声を掛けられても気付かず、教師には説教されるどころか心配される始末だ。そんな抜け殻具合を見兼ねて好意で荒治療─蘭や世良からすれば危険極まりない傷を抉るだけの暴挙─を行うことにした園子に引きずられ、名前は降谷もとい安室が死んで以降初めてポアロを訪れた。
 耳馴染みのいい涼やかなドアベルに招かれ入ったそこは、夕食前の時間ということもあり落ち着きを見せていた。
「名前ちゃん...!」
 呼び掛けたものの何と言うべきか言葉を探す梓に名前は苦笑した。
「梓さん、お久しぶりです」
「う、うん、久しぶり。ここどうぞ」
「ありがとうございます」
 促され座ったのは初めて安室に会った時に案内されたのと同じ席だった。あの日安室が座っていた席に座りメニューを覗いているのは世良だ。気付けばその姿をじっと見つめていた。
「それで?噂のイケメンはどこよ!?」
「いないみたい。今日はお休みなのかな」
「え、園子くん、もしかして」
「そうよ。あんたたちは勘違いして名前のためにここに来たと思っているみたいだけど、わたしはイケメンに会いに来ただけよ!」
「「はあ...」」
 荒治療どころか見物に付き合わせるのが目的だったことにやっと気付いた二人は深く溜息を吐く。学校では話の二割も聞いていないだろう名前には当然何のことか分からず、きょとんとしていれば蘭が口を開いた。
「一月前から新しいアルバイトの人が入ったんだけど、その人が爽やかイケメンって感じの人で...」
「ああ、だから...」
 納得した名前はそのイケメンの行方を梓に聞いている園子を見て、同じ女子高生なのに自分とは違うのだなあと不思議に思った。
 名前は水中で石や枝に引っ掛かった滞留物だ。水の流れのように自分の心を動かそうとする人やその言葉にゆらゆらと揺らされながらもそこに留まり続ける。やがてどこかへと向かっていくことはもう放棄した。
「七星くんなら今買い出しに...」
 梓の口から発せられたその名に名前は目を見開く。同時にドアベルを鳴らし開いたドアから戻ったことを伝える声が響いた。
「七星くん...!」
 友人たちが驚いているのを気にする余裕もなく名前は七星に掴みかかった。その表情は今にも泣きそうで七星は苦笑する。
「俺に会いたいって思ってくれたんでしょ?それなのになんで泣きそうなの?」
「だっ、て...!」
「梓さん、ちょっと名前ちゃんと話をさせてください。おいで」
「ちょっ!ちょっと!どういうこと!?」
 園子の叫ぶような声を背に受けながら、七星は名前の手を引き店の外へ出る。建物と建物の間の細い路地に身を滑り込ませると、振り返りにこやかに笑った。
「やっと会えた。もっと早く会えると思ってたのに、なかなか店に来てくれないから」
「っ...零さん、零さん!」
 名前はその胸に飛び込もうと手を伸ばす。しかしそれが背中へと回ることはなく七星によって止められた。
「......俺は零さんじゃないよ?」
「...え?」
 七星は悲痛に、名前は絶望に表情を染める。
「なんで...?だって、ネックレス...北斗七星...」
「俺を思い出して、会いたくなって欲しいから伝えたんだけど...、どうやら零さんへの想いを募らせる結果になっちゃったみたいだね」
「七星くん、?零さん、違うの?」
「当たり前だよ。僕は僕、零さんは零さんでしょ?同じなわけないよ」
 切なく笑う七星は悲しみを見せないよう瞳を細めた。再び降谷を失った苦しみと、思い込みで七星を傷付けた罪悪感。名前は小さく謝ると建物の壁に寄りかかった。
「気にしないで。名前ちゃんは零さんのことが大好きなんだから仕方ないよ。ほら、笑って?また園子ちゃんたちが心配するよ?」
「......うん」
 背中を撫でて慰められ名前は溢れ落ちそうになっていた涙をどうにか堪える。今泣くのは七星に失礼だと思った。
「どういうことか説明して」
 店内に戻るなり仁王立ちした園子に詰め寄られて名前は後退りし、七星の胸へと背中がぶつかった。
(あれ...?)
 一瞬降谷に抱き締められたかと思った。間違いだと分かっている。支えてくれたのは七星で、降谷ではないと。しかしどうしても降谷を重ねてしまう。七星に降谷を求めてしまう。
「とりあえず話は座ってからにしようよ」
 名前と園子を座らせた七星は名前の傍に立つ。
「たまたま公園で知り合ったんだよ。傷心の名前ちゃんを口説いたんだけどフラれて、会うのは一ヵ月ぶりくらいかな」
「あ...、そうなんですか...」
(またあんたはイケメンを釣ったのか!)
 キッと園子に睨まれるだけでなく、心の声も聞こえた気がして名前はやはり身を引く。ソファにもたれると、その肩を七星が叩いた。
「俺も作れるようになったんだよ。ハムサンド、食べる?」
「......ううん、やめとく」
「...そっか。いつか食べてね」
「うん。コーヒーお願いします」
「かしこまりました」
 落胆したのを隠し笑顔を向ける七星に名前はもちろん、三人の友人と梓も胸が痛んだ。正面からじっとりと睨んでくる園子の視線から逃げるためではなく、自然と去る背中を目で追っていた。よく似た広い背中に飛び付きたいと、そう思わずにはいられない。
 湯気を立てるカップを手に七星が笑う。コーヒーカップ、シュガーポット、ミルクポット、それらを置く仕草は降谷と酷似していた。似ているどころか、全く同じと言って差し支えない。
(零さんじゃないのに...)
 それなのに心が囚われてしまう。重なる姿に好きだと叫びたくなる。熱い胸に顔を埋め、逞しい腕に力強く抱き締められたい。あの人の声で名を呼ばれ、愛していると、離さないと言って欲しい。
「名前ちゃん...」
 七星に呼ばれてはっと顔を上げる。その拍子にいつの間にか瞳に張っていた涙が頬を滑り落ちた。怖々と伸ばされた手袋が覆う指先が雫を掬い頬を撫でる。
「七星くん...。手袋の下、見せて」
「!」
「ね、見せて」
 七星は色白だ。それなのに手袋の下の肌が別の色をしているのではないか、そんな馬鹿なことを考えた。
「......気持ちのいいものじゃないよ。薬品がかかっちゃったんだ」
 あまり見せたくないと雰囲気で語りながらも七星は左手の手袋を外し、そして誰かが息を飲んだ。手の甲には皮膚が色を変え爛れた痕が残っていた。
「右手はもっと酷いんだ。名前ちゃんに嫌われたくないから...ううん、もしかしたら今ので気持ち悪いって思ったかもしれないけど」
「そんなことない!ごめんね、わがまま言って。ごめんね、傷付けて...」
 ぽたぽたと溢れる涙の理由が名前には分からない。七星の知られたくないものを無理矢理暴き傷付けたからなのか、降谷だと勝手に期待し裏切られた絶望からなのか、はたまたそんな自分を醜いと思ったからなのか。
「名前ちゃん...」
 七星の手が再び近付いてくる。それを立ち上がって回避した名前は鞄を引っ掴み、財布から数枚札を抜きテーブルに置いた。
「...今日は帰るね」
 すっと七星の隣を行った名前に園子は眉を顰める。
「あいつ...!サイテー!」
「園子ちゃん、いいんだ。俺が悪いんだ...」
「でも!」
「背丈とか、似てるんでしょ?しかも俺、代わりにしていいよって言ったんだ。だから最初に傷付けたのは俺で、だから、俺が悪いんだ」
 テーブルに並べたばかりのものをトレイに乗せ、七星はカウンターへと下がった。潤む瞳が誰かに見られることはない。
「名前...、ごめんな...。でも仕方ないんだ...」
 寂しげに呟かれた言葉はコーヒーと共に排水溝に流れていった。





 ポアロを出た名前は俯き右も左も分からないまま歩いていた。それをすれ違う通行人が心配そうに見送る。
 名前の心にはいつだって降谷がいる。笑顔でこちらを向いたまま少しずつ少しずつ遠ざかっていく。自分は死人だ、過去の人間だから忘れろと、そう言っているようで必死に手を伸ばすも届くことはない。
 ふっと意識を取り戻させたのはドアベルの音色。紙袋を持った女性とすれ違えば食欲を唆るバターの香りが鼻をつく。すぐ横のガラス窓から見えた店内には美味しそうなパンがいくつも並んでいた。
「あ...ここ...」
 いつの間にか降谷考案のハムサンドが売られているパン屋まで来ていたらしい。普段は通らない道、もっと言うと家とは反対の方向で何故こんなところにいるのかと自分に呆れてしまった。しかしもうこの方面に来ることもあまりないだろうからと足を踏み入れれば、先程聞いたのと同じ、ポアロのものよりも高い音を立てるドアベルに迎え入れられた。
 定番からこの店ならではのパンまで、どれも美味しそうに移るのにやはり探してしまうのはハムサンドだった。
(七星くんのは断ったのに...。態度も最悪だったな...)
 冷蔵ショーケースへと歩みを進めながら名前は後悔を覚える。会って謝らなければならないと思っても、きちんと謝れるか、再び降谷と重ね更に傷付けてしまうのではないかと不安は尽きない。
 ほとんどが売れ隙間の多いショーケースの下段に最後の一つのハムサンドはあった。しかしそれは公園で会う七星が持ってきていたものとは違い、ラップではなくプラスチックパックに入っていた。
 再び頭に浮かんだのは、先程七星によって否定された期待。
 勢いよくレジに現れた名前にスタッフは驚きながらもにこやかに接客し、イートインスペースを勧めた。促されるままテーブルについた名前はすぐにハムサンドにかぶりつく。ポロポロと涙をデーブルに落としながら、今までとは僅かばかり違う味のそれを食べ進めた。
 ついさっき俯いて歩いた道をひた走る。息が上がり、胸が痛くなっても止まらずに、止まれずに走り続けた。
 ようやく辿り着いたポアロのドアを勢いよく開くと呆けた表情の梓と視線が絡んだ。それを気にする暇もなく店内の端から端まで視線を巡らせ叫ぶ。
「れっ、七星くんは!」
「えっと、今日はもう上がったけど...」
「家は!?どこですか!?」
「ええっと...」
 名前に詰め寄られ梓の持ったトレイの上で皿がぶつかり音を立てた。
「七星さんなら新一の家に住んでるけど...」
 未だ残っていた三人の友人の中で蘭が答えて名前はそちらに駆け寄る。
「それってどこ!?」
「えっと2丁目の...」
「2丁目...!」
 それだけ聞くなり名前は店を飛び出した。
 走って、走って、走る。涙が、汗が、風に攫われて、疲れた脚は痛みで止まるよう訴えてくる。それでも止まることは到底出来なかった。
 ずっと会っていて、けれど会えなかった、愛しい人に会うために。
 見つけ出した工藤邸の呼び鈴をしつこいくらい鳴らせば訝しげな声で応答があった。
「七星くん!七星くんに会わせてください!」
「......少々お待ちを」
 遠くに見える玄関が開いて門まで茶髪の男が歩いて来る。眼鏡の奥の瞳と口元が緩やかに孤を描いていた。
「弟は今入浴中なので中で待っていてください」
 肩に回った手に押されながら名前は屋敷の玄関へ入る。ちょうどそこには見開いた瞳に怒りを滲ませる七星が立っていた。肩に乗る兄の手と寄せられた身体に怒りのまま声を荒げようとして、しかしそれは名前の行動によって止められた。
 素早く男から離れた名前は七星が着るシャツの裾を捲りあげた。露になった腹は普段晒された白い肌とは違い暗い色をしていた。 硬直したところに飛び付かれ、七星はそのまま尻餅をつき一瞬痛みに顔を歪める。それから聞こえた嗚咽にやはり表情をなくし硬直した。
「ばか、ばか...!零さんのばかぁ...!」
 震え力の無い名前の手が七星の割れた腹部を叩く。
「あほ...!くそやろー...!」
 並び立てられるのは最早小学生でも言わないような悪態だ。
「っ...名前、」
 どうにか絞り出した声は七星のものではなかった。しまった、と降谷が慌てても既に遅い。より勢いを増して泣き出した名前についぞ観念した。
「名前、ごめん。騙したいわけじゃなかったんだ。お前を危険に晒したくなかった」
「っぐ、ひど、ひどいよっ!何回も期待させて、その度に否定してっ...!わたしが、わたしがっ...!うっ、うわああああん!」
 声を上げわーわー泣き出した名前を抱き締め、降谷はその温もりを確かめる。やはり七星である時に自分への想いを聞かされるのとは違った。ただ申し訳なく、切なかったそれが今は愛される喜びとしてしっかり受け止められた。
 びゅぅと冷たい風が開いたままの玄関から吹き込んで降谷はそちらに目を向ける。そこには物珍しげな表情でこちらを凝視する兄、沖矢昴、もとい赤井秀一がいて、こめかみをひくつかせた。
(空気読んでどっか行けよ...!)
(勝手にイチャつきだしたのはそちらだろう...)
 睨まれながらあっち行けと顎で指示された赤井は、やれやれと肩を竦めて閉まる玄関ドアの向こうへと消えた。隣の阿笠邸にでも行くのだろう。
「名前」
 こんなところで話すような内容でもない。七星は立ち上がり名前を促すが口を尖らせ首が振られた。
「だっこ」
 腕を伸ばし見上げてくる駄々っ子に降谷は陥落した。顔をダルダルに緩め、堪らず再び抱き締める。
「なんでそんなに可愛いんだ...あ〜〜〜好き...」
 鼻先を髪に埋め深呼吸を数回。それから背と膝裏に手を添え抱き上げると工藤邸で自室としている部屋へ急ぎ足で向かった。
 ベッドに腰を下ろした降谷は膝に乗せた名前を後ろから抱き締める。七星の時ではできなかったことだ。
 唇を耳に押し当て愛を囁き、首筋を鼻先で辿り、項に吸い付く。手放そうとして結局手放せなかった存在が腕の中にある喜びに酔いしれた。
「ねえ、どうして?」
 その問い掛けに降谷は動きを止めた。顔だけ振り返った名前の目尻が涙で濡れている。それを舌でなぞると、向き合うように身体の向きを変えさせた。
「スパイだと組織にバレて殺されそうになったんだ。どうにか死を偽装して沖矢七星という新しい人間になった俺は今も潜入捜査を続けている」
「どうして?どうしてそんなに危ないことをするの?死ぬかもしれないんだよ?」
「俺が成し遂げなければならないからだよ。今回はどうにか生き延びることができた。だが次はないかもしれない。俺だけなら、俺だけならいいんだ。でも俺のせいで名前にまで危険が及ぶのはどうしても避けたかった。だから俺が生きている真実を伝えなかった。それなのに、」
 そこで言葉を止めた降谷は壊れ物に触れるかのように怖々と名前の頬に手を伸ばす。指先が触れると一度離れて、それから親指で目元をなぞった。
「それなのに俺はお前から離れてやれなかった。どうしても離れたくなかった。俺を忘れないで欲しくて、俺だと気付いて欲しくて、でも知られてはいけないとお前が気付いてくれて嬉しいのに否定した。俺のわがままのせいで苦しかったよな、ごめん...」
「許さないもん...!許さない...!」
「そう、だよな。許さなくていい。でも...、嫌いには」
 続く降谷の言葉を名前が唇で奪った。驚いた降谷が身を引こうとすると、名前は両手で頬を包み舌を口腔へと忍ばせる。絡んだ舌がくちゅりと音を立てると腕を首に回し身体を寄せた。
「嫌いになんてなるわけない...!零さんがいないと生きていけないって言ったでしょ?だから心の中の零さんだけを想って生きようって、そう思って...!零さん、好き、好き...!離れていかないで...!」
「俺も、もう離してやれない」
 降谷は名前の首裏を手で支えると深い口付けを送る。息付く暇もない激しいそれに名前も必死で応えた。
 腰に回されていた手がいつの間にかあちこちを撫で回し、更にスカートの中に侵入してくると名前はそれを叩いた。ぱちぱちと瞬いた降谷が再び顔を近付けてくると、その顎を掌で上へと押し上げる。
「なあに、この手」
「わたしは零さんの彼女だもん。七星くんの彼女じゃないもん。っていうか今零さんとして再会したばかりなのに、もうしようとするなんて虫が良すぎる。反省しろバカ!色々禁止!」
「は?嘘だろ?」
「嘘なんか言わないよ。わたしは零さんとくっつけるだけで...この温もりに触れて零さんが生きてるって実感できるだけで満足だもん」
 肩口に寄せた頭をすりすりと動かす名前に降谷は顔を顰めた。腹の深いところが熱く疼き欲望が膨らんでいくのを止められない。
「......零さん、これなに?」
 触れ合っているところからそれを感じ取った名前が腰を揺らす。柔らかく擦る動きがもどかしくて、気持ちよくて、降谷は細く息を吐いた。
「久しぶりにお前に触れてるんだ。そりゃあ溜まってるし...仕方ないだろ」
「ふーん...ま、しないけどね。わたしが帰ったら一人でして?」
「なっ!」
「あたりまえでしょ?それはそちらの事情のせいだし、零さんには戻れないんでしょ?わたし零さんの彼女だから七星くんとはできないよ。浮気してる気分になるし...」
「す!姿は七星だけど中身は俺だぞ!?」
「そうだけど...うん、やっぱり別人だもん。零さんに抱かれたい」
「ぐぅぅっ!」
 同一人物と理解していても別人で、本当の自分に抱かれたいと願う恋人の言葉は降谷の心を大きく揺さぶった。
(可愛い可愛い抱きたい可愛い抱きたい抱きたい抱きたい〜〜〜!!!)
 喜びは海よりも深く空よりも高く、抱けないもどかしさも同じだけある。しかし七星の変装を解くわけにはいかない。どこからか降谷が生きていると情報が漏れれば、名前をはじめ接点のある者たちが危険に晒される。
 例え組織を壊滅に追いやることが出来たとしても、そのために大切な人たちが犠牲になっては意味がない。
 縋った身体から徐々に温度が失われていくあの感覚が忘れられない。もう二度とあんな思いはしたくない。
 近しい者は皆死んでいった。残るのはもう──
「今日は帰らないでくれ。せめて抱き締めさせて」
「......」
「名前、頼む...」
 迷子になった幼子のように寂しげで不安そうな声に名前は頷き降谷の頭を胸に抱いた。
「零さん、わたし待ってるから...早く零さんの顔を見せてね」
「ああ...」
「零さん、おかえり」
「っ、...ただいま...!」
 降谷の蒼い瞳から溢れた雫が名前の肌を濡らした。





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