
Bookso beautiful yet terrific.
「なあなあジャミル。あのすっごい美女おまえの知り合い?さっきからめちゃくちゃにこにこしながら手を振ってくるんだけど」
「は?」
飛行術の授業中にかけられたクラスメイトからの質問にジャミルは顔を顰める。それからクラスメイトが示す先を見ると一際目を惹く美女が手をぶんぶんと振っていた。胸元が開いた服装のせいで大層立派な膨らみをゆっさゆっさと揺らしながら。
「げっ!!!なんであの人が!?」
ジャミルが見て見ぬふりをしようかと悩むが、時既に遅し。その場に居合わせたクラスメイト達や教師のバルガスまでも謎の美女とジャミルに視線を注いでいる。
「バイパー!おまえに用事があるらしいな!相手はあのアジーム家のご令嬢だ!遥々来てくださったのだから顔を出してこい!!!」
バルガスが白い歯を見せて余計な気遣いをしたせいでジャミルは尚更頭を抱えたくなった。
「へえー。アジーム家といえばカリムさんの縁者ですねえ。僕、ぜひお近づきになりたいです」
「ならなくていい」
あきらかに野心を含ませた笑みを浮かべるアズールをジャミルは間髪入れず拒否。それからジャミルは周りの痛いくらいの視線をびしばし感じながら急ぎ足で彼女の元へ向かった。
「何してるんですか!?あんなに大勢の前で手を振って!しかも、そんな露出の激しい服で来て!ここが思春期を拗らせた男どもの巣窟であることをお忘れですか!?」
「ジャミルくんの姿が見えたからつい!それにしても、ジャミルくんはファッションについて相変わらずうるさいなあ」
「あなたが危機感なさすぎるからでしょ!?」
えー、と不満そうに唇を尖らせる彼女の姿に自然とカリムの表情と重なる。この姉弟、抜けてるところほんっとにそっくりだな!!!とジャミルは内心叫んだ。
「それで。ジャミルくんはいつ飛ぶの?あとどのくらいで順番来る?」
「授業参観はやめてください」
「これくらい、いいじゃない。仕事でただ学園に出入りするだけじゃあつまらないもの。勿論、カリムの授業中の姿も覗きに行くわ」
「や、め、て、く、だ、さ、い!!!とにかく!!!これ以上いたら目立つし騒ぎになりますから学園長と商談が終わりましたら速やかにお帰りください」
「せっかくジャミルくんに会えたのに」
しゅーんとあからさまに彼女が沈んだ表情を浮かべた。ジャミルは思わず、うっと後退りした。心底悲しそうにされるとジャミルは何も言えなくなる。結局、ジャミルは溜息を吐きつつもこう言うのだった。
「分かりました。昼食の時間までお待ちいただけますか?そうすれば学食ですけどご一緒に食事できるかと」
「本当!待ってる!ジャミルくんと一緒にご飯食べれるの、嬉しいなあ」
カリムそっくりの笑い方で笑みを浮かべる彼女の姿にジャミルの内心は複雑な心境だった。
「いつもありがとう!ジャミルくん!」
何の前触れもなく、ジャミルの頬にちゅっとリップ音が鳴った。一瞬、ジャミルはフリーズした。当の彼女はバイバーイと手を振ってさっさと去って行ってしまったわけだけど。
「な、な!?あ、の、人は!!!あの人はもう!!!」
その後。わなわなと肩を震わせながら顔を真っ赤に染めたジャミルが叫ぶ姿を、クラスメイト一同ニヤニヤしながら見ていたらしい。
2022.12.03