
Bookso beautiful yet terrific.
終業式を終えて屋敷に戻るとアジーム家に仕える使用人達がずいぶんと慌ただしかった。何事かと思いながら広大なアジーム家の屋敷の敷地内にある自宅へ行けば、両親がハッとしたように私を見る。
「カリム様が本日お戻りになるんですって。今夜は宴よ。あなたも早く準備を手伝いなさい」
両親は早口にそう言ってから自宅を出て行った。残された私はカレンダーを見る。
「まあ、私の学校も今日からホリデーだし。帰ってくるのは当然か」
思わず、長く深い溜息を吐いた。それから荷物を置いてアジーム家の腕章が入った使用人服に着替える。内心気が進まないけれど自宅を出て屋敷に私も向かうことにした。
アジーム家の広大な玄関を箒で掃いていると、ふと、背中に殺気を感じた。その人物は地面を蹴って私に向かって一直線に向かってくる。私はくるりと振り向いてから向かってくる人物から避けてみせた。
「カリム様。お帰りなさいませ」
ぺこりと頭を下げると、私に避けられた刺客もといカリム様は急ブレーキをかけて立ち止まる。それから瞬時に私の目の前に移動しては私の両手を自身の両手でぎゅうと握りしめた。そのせいで、持っていた箒が地面に落ちた。
「ただいま!やっと会えた!ずっとおまえに会いたくてしょうがなかったよ!」
「そうですか。光栄です」
「お?照れてるな!おまえは相変わらずだなあ。あ!会わない間にまたかわいくなったな!」
眩い笑顔で言ってのけるカリム様に対し私は顔を顰めていく。すると、カリム様の首根っこがむんずと掴まれてしまった。
「先に勢いよく走って行ったと思えばやっぱりそうか」
深々と溜息を吐くジャミルさんのおかげでカリム様が私から離れていく。
「おかえりなさい。ジャミルさん」
「ああ。ただいま。留守中、変わりはないか?」
「はい。問題ありません」
「そうか。よかった」
私の返答にジャミルさんが心底ホッとした表情を浮かべる。しかし、カリム様はそれを良しとはせずジャミルさんの手から逃げたと思えば私に両腕を伸ばした。
「ジャミルには笑いかけるくせに俺にはないのかよお」
背後からむぎゅうと抱きしめては不満を口にするカリム様の姿に私は眉を寄せる。本当に、困った人だ。
「カリム。使用人に手を出すのはアジーム家の跡取りとして色々と問題になるからやめろ」
「まだ手は出してないって。これから出すんだよ。な?」
屈託のない笑顔で宣言されても困ります。私は思わず額に手を当てた。
「ジャミルさん。何とかしてください」
「とりあえず、君の部屋に嘆きの島から取り寄せた最新の生体認証付きのセキュリティシステムを取り付けよう」
「そうしてください」
私とジャミルさんの会話を聞きながらカリム様は私の身体を抱きしめる手を緩めず、寧ろ強くしてくる。いや、本当、立場上すっごくやめていただきたい。
「それにしても、最新のセキュリティかあ。俺とおまえが結婚したら、新居に取り付けようぜ」
アッハッハッハと笑いながらさらっと言っちゃうカリム様に対し、私とジャミルさんは深々と溜息を吐いた。
玉の輿は嬉しいけど、主人に恋情を持たれるのはなんだか複雑です。
2022.12.03