Bookso beautiful yet terrific.

 あたたかくなってからの学園の長期休みに故郷である珊瑚の海に帰省すれば、我が家と併設しているリストランテは相変わらずたくさんのお客様で賑わっていた。
 すると、ホールで注文を取っていたウツボの人魚が僕に気がついたらしく客席を縫って泳いでは目の前にやって来る。それから特徴的なギザギザの歯を見せてにっこりと笑ったのだった。

「アズールじゃ〜ん。お帰りなさい」

「ええ。どうも」

僕の対応に彼女は特に気にせず、すぐにお客様に呼ばれては注文を取りにいなくなってしまった。思わず、僕が小さく息を吐くとトントンと肩を叩かれる。心底嫌な予感をしながら振り向けばそこにはにっこにこに微笑むウツボの人魚がいた。

「せっかくうちの世界一かわいい妹が出迎えたのですから愛想良くしていただけます?」

「愛想良く返せばおまえは、よくもうちの妹を誑かしましたね?と怒るじゃないですか」

「当たり前です。あくどいタコの人魚になんぞ僕のかわいい宝物を渡すつもりはさらさらありません」

ジェイドの言葉に僕はあからさまに顔を顰めてやった。酷い言い草だと返してやりたいが、残念ながらジェイドは盲目なまでに自身の妹には目がない。それこそ、うっとりとキノコを見つめているのと同じくらいに。

「たっだいま〜」

 ジェイドに続き、他人の家に遠慮なくやって来たフロイドはお客様の反応なんぞ全く気にせずそのままの勢いでホールで動き回る妹を捕まえてはぎゅうっと両手で抱きしめる。フロイドの腕の中に閉じ込められ彼女は明るい笑顔で兄を出迎えた。

「フロイド!お帰りなさい。長旅で疲れたでしょう?」

「ぜーんぜん!かわいい妹の元へ帰るためなら俺めっちゃ頑張るし〜」

「もう。フロイドったら」

まるでバカップルですか?と言いたげな会話をしながら客席でいちゃつくウツボの人魚達に僕は呆れて言葉が出ない。僕の隣で、自分の片割れ達がいちゃつく姿を黙って見ていたジェイドは無言でそちらへ泳いで行った。

「僕にも、お帰りなさいのハグをしていただけますか?」

「勿論」

「ついでに、頬にキスも欲しいですね」

「は〜い」

ジェイドの言葉に彼女は一つ返事で了承してからすぐにフロイドの腕から抜け出し、言われた通りにジェイドに対してハグとキスをする。勿論、フロイドが唇を尖らせたのは言うまでもない。

「え〜!ジェイドだけずるいじゃん!」

「早い者勝ちですよ」

「まあまあ二人とも!私のために争わないでください」

 ホールのど真ん中で和気藹々と兄妹同士でいちゃつくウツボの人魚達に僕は肩を震わせる。それから三人の元へ行き文句を言うのだった。

「いくら兄妹だからって他人の家でいちゃつくのやめてもらえませんか!?というか、おまえ達のかわいい妹は今はバイト中だ!ちょっかいをかけるんじゃない!!!」

勿論、一喝されたジェイドとフロイドがさらに僕に対して文句を言ってきたのは言うまでもない。

2022.12.10