Bookso beautiful yet terrific.

「あと何処まわるんだっけ?」

「確か、」

 私が手にする買い物リストを記入したメモを彼も覗き込んで一緒に見る。恒例になりつつある貴銃士達主催のクリスマスパーティーのための買い物をもう一度確認すると、あと一軒のお店をまわれば終わりそうだった。

「ここのお店に行けば終わりだね」

「あーあ。やっとパシリから解放されるわ」

「パシリって。ライク・ツーらしいなあ」

両手いっぱいに荷物を持った彼が疲れたと言わんばかりに首を左右に動かしてみせるので、私はつい、その彼らしさに笑ってしまう。実際、彼は口ではそう言うけど率先して荷物持ちを買って出てくれるので優しい。本当、素直じゃない。

「それにしても、士官学校に戻る頃には夜になっちゃうね」

「まあ、これだけの量の買い出しだからな。仕方ねえだろ」

私達は話しながらどちらからともなく再び歩き出す。すれ違うカップルや夫婦に家族連れも、今年のクリスマスプレゼントは何にしようか?何処で過ごす?なんて会話をしながら楽しそうだった。

「そういえばさ。おまえはクリスマスを一緒に過ごすボーイフレンドとかいないの?」

 唐突に彼から言われた言葉に私はああと口を開く。残念ながら、そんな人は私にはいない。

「いるわけないでしょう」

「だよな」

私の返事に即答で相槌を打つ彼に失礼だなあと思う。ふと、ボーイフレンドかあと思いながら私は再び口を開いた。

「幼い頃にね、クリスマスの日に恋をしたの」

「おまえにもかわいいところあるじゃん」

「それって褒めてるの?まあ、いいや。とにかくね、一目惚れしたの。その人に」

「つーか、なんでクリスマス?まさか、初恋の相手がサンタクロースって落ちじゃないだろうな?」

「違うってば」

私は幼いの頃の記憶を頭の隅っこの中から引っ張り出した。

「両親を亡くして孤児院に入ってから初めてのクリスマスを迎えた日。その日、私は孤児院のみんなと一緒にクリスマスマーケットに行ったんだけど、逸れちゃって。そうしたら、その近くで革命軍と世界帝軍が戦ってて、巻き込まれそうになったの」

へえーと彼が言葉を返す。重々しく捉えてなさそうな彼の素振りにホッとしつつ私は続ける。

「その時、私を助けてくれたのがガスマスクをしたピンク色のツインテールの髪型をした美少女だったの」

「は?」

 不意に、彼が足を止めて私を凝視する。私も足を止めて思わず火照る頬に掌を当てた。

「ガキがこんなところに来るんじゃねえよ、邪魔だからうせろ。って美少女が言いながら私の首根っこを掴んで安全な場所まで連れて行ってくれたの!私、少し声の低いその美少女に一目惚れしちゃって!きゃー!」

「落ちつけ!!!つーか、それ助けてねえから!マジでおまえが邪魔だっただけだから!」

「いいえ!あれは助けてくれたのよ!ガスマスクのせいで表情は分からなかったけど。なんで子供がここにいるの?こんなかわいらしい子、巻き込みたくない!助けないと!と内心思ってくれていたに違いないわ!」

「自分をかわいらしいって表現するおまえのメンタル強くね!?」

「ああ、何ということなの。私は革命戦争で両親を亡くした身。だから、世界帝軍に属するあの美少女とは決して結ばれない運命なのよ。まるで、ロミオとジュリエットのように」

はあと深々と溜息を吐く私の顔を彼が無言で見つめてくる。おまえ何言ってるの?と言いたげな顔だけど気にしない。

「まあ、でも。もう会えないんだけどね。世界帝軍は壊滅したし、あの美少女もきっと捕まっちゃったと思う」

 たった一度しか会ったことないけど、今でも鮮明に覚えているほど綺麗な女性だった。同じ女性とは思えないほど、芯が強くまっすぐ前を向いて戦場に立つその姿に幼い私の心臓が激しく高鳴った。

「今でもそいつのこと、好き?」

彼からの質問に私は頬を緩ませる。少し冷めた頬から手を離して頷いた。

「好き」

「そっか」

 不意に鐘の音が鳴る。私がそちらを向くと、街路樹を飾るイルミネーションがちょうど点灯したところだった。

「ねえライク・ツー!寄り道して行こうよ!きっと広場にあるクリスマスツリーも点灯しているだろうしさ」

そう言いながら彼に振り向いた瞬間、唇にあたたかいものが押し当てられる。目を見開いた先には大層綺麗な顔が目を閉じてそこにあった。
 固まる私を余所に、彼は私から離れると先に歩き出す。数歩だけ進み、振り向いた彼が動かない私を見て眉を寄せた。

「クリスマスツリー、見に行くんだろ?」

我に返った私は急ぎ足で彼の元へ行く。彼の隣で歩きながら私は心臓がドキドキと高鳴るのを止められなかった。
 まるで、幼い頃に初恋の美少女に出会った時と同じように。

2022.12.24