
Bookso beautiful yet terrific.
世間はクリスマスイブだというのに、私は残念ながら仕事だった。煌びやかな街中で幸せそうに寄り添うカップル達を横目に私は寒さを堪えながら一人暮らしの自宅へ向かう。道中、コンビニに寄ってショートケーキとビールを買うことも忘れずに。
自宅に着いて玄関の鍵を開けて中へ入る。入口の壁を弄り部屋の電気をつけると、そこには全身真っ白いと形容できる男が立っていた。
「よっ!俺みたいのが突然来て驚いたか?」
私の顔を見るなり歯を見せて笑う彼の姿に私は思わず後退る。ドンと背中に玄関の扉が当たった。
「だ、だれ、」
見知らぬ男が勝手に部屋に上がり込んでいるのだから、すぐに警察に連絡しなければ。いや、まずは逃げるべきだ。頭の中にぐるぐると考えが巡るが恐怖が勝って足が動かない。
「まさか俺を忘れたのかい?いや、審神者を辞して時が経っているのだから、記憶が無くても当然か」
男がうんうん一人納得してから私の元へ足を向ける。一方私は情けなくもただ肩を震わせるだけだった。
「主」
ぴたりと歩みを止めた男は私と一定の距離を取って対峙する。私の名前ではないその呼び名を口にした男は眉を下げて微笑んだ。
「Merry Christmas」
あまりにも悲しそうな顔で微笑む男の表情に私はわけも分からず胸に込み上げる。
「きみが俺に教えてくれた言葉だ。今日は12月24日。サンタクロースは誰にでも平等に贈り物を届けてくれるのだろう?」
そんなことを言ったことはない。そう返したいのに何故かできなかった。それは、見ず知らずの男が家にいた恐怖心からなのか。或いは、別の理由だろうか。
「ずっと、きみを探していたんだ」
男の言葉に、視界が滲む。理由も分からず泣きたくなる私を、男は黙って愛おしそうに見つめるだけだった。
2022.12.24