Bookso beautiful yet terrific.

 自室のベッドで寝そべり、王宮から届いた急ぎの知らせを見たレオナは思いっきり顔を顰めた。そこには、茨の谷の次期当主の妹君との縁談について記されていた。レオナは怒りのあまり手にしているたった今読んだ書面を砂に変える。

「ふっざけんな」

地を這うような怒りの声を出しながらベッドの上から起きて身支度するレオナを、レオナの世話をしていたラギーが手を止めて見る。何かおもしろそうな予感がしたラギーはシシシッとこっそり笑った。

「おいラギー」

「なんスか?」

「出かける。あとは何とかしておけ」

「ん?あー、了解っス」

そう言い捨てたレオナは財布とスマホだけ持って自室を出て行く。その後ろ姿を目で追いかけたラギーはやっぱりおもしろいことがあると感じずにはいられなかった。


 レオナが向かった先はディアソムニア寮だった。無遠慮にディアソムニア寮内の談話室に入るとそこには既にマレウスがソファにゆったりと座り寛いでいる。

「キングスカラー、来たのか」

「俺個人の問題なら来たかねえよ。だけど、これはそうもいかねえだろ」

艶やかに微笑むマレウスに対しあからさまに溜息を吐いたレオナは空いているソファに適当に腰を下ろす。
 キングスカラー家とドラコニア家双方の立場を考えると、レオナは渋々ながらもまずはマレウスと話すしかなかった。この話俺も断るからおまえも断れよ、と。
 レオナがさっさと本題に入ろうとしたちょうどその時だった。

「兄さん。茶葉は何処にあるの?紅茶を淹れたいのに勝手が分からなくて」

 頭にマレウスと同じツノを生やした少女がそこに立っていた。マレウスと似たような顔立ちのわりには、彼女の方がマレウスに比べると朗らかな印象を受ける。
 まさか渦中の妹が来ていると知らず、レオナは内心めんどくさいことになったと思った。しかし、夕焼けの草原の第二王子としてここで適当な態度を相手に取るわけにはいかない。レオナは仕方ないと腹を括り、マレウスに目配せをした。
 その視線を感じ取ったマレウスがソファから立ち上がって彼女の元へ行く。

「キングスカラー。これは僕の妹だ」

それを聞いたレオナは即座にその場から立ち上がり、優雅に腰を折って見せる。

「お初にお目にかかります。夕焼けの草原の第二王子、レオナ・キングスカラーと申します。以後、お見知り置きを」

 たった今まで会話していた学友の全く別人かと思う姿にマレウスは目を瞬いてからおもしろいと言わんばかりに頬を緩める。
 一方彼女は、レオナの挨拶に内心慌てつつも表面上には出さないように気をつけながら挨拶を返した。

「こちらこそ、お初にお目にかかります。先程紹介にありました通り、私がマレウス・ドラコニアの妹にございます。いつも兄がお世話になっております」

彼女はワンピースの両裾を軽く摘んで腰を折る。
 まるでかわいらしい駒鳥のような初々しい姿にレオナは思わず頬を緩ませる。断ろうと思ったが、まずは様子見も悪くないと思いながら。
 そんなレオナの整った容姿から放たれる微笑に彼女は内心ドキドキしていた。本物の王子様だ、と思いながら。
 二人の姿にマレウスは思わず眉を寄せた。大事な妹はまだ、王子様ってやつにも渡す気はない。

2022.12.23