Bookso beautiful yet terrific.

 12月に入ると街中何処もかしこもクリスマスカラーに染められていた。もうすぐナイトレイブンカレッジもウィンターホリデーに入るので大半の生徒達は実家へ帰省していないが、モストロ・ラウンジは通常通り営業しているので学園外からのお客様のおかげでそこだけ人で溢れ返ること間違いなしだ。
 さて、今年のクリスマスメニューの目玉は何にしようかと考えながら麓の街を歩いていると、一軒のお店の中から監督生さんが出てくる姿を見つけた。

「あ、」

監督生さん。と呼ぼうとして口を開けるが声に出すのをやめた。何故なら彼女は両手に、ラッピングされたプレゼントを紙袋に入れた物をいくつも持って足早に何処かへ向かおうとしているのだから。
 グリムさんにプレゼント?それにしてはずいぶんと量が多い気がする。もしや、エースさんとデュースさんにも?まさかとは思うが、誰かに貢がされているとか?
 なんぞ頭の中で悶々と考え込んでしまうが、恋人でもない男から、それ誰へのプレゼントですか?と尋ねられれば気味が悪いだろう。と、分かってはいるが僕は彼女の後をつけることを止められなかった。だって、想いを寄せている女性の休日を気にならない男なんぞいないに決まっている。
 彼女は表情を変えず足早に歩いて行く。足取りを見るに目的地がはっきりしているようだった。僕は一定の距離を保ったまま彼女の背中を追いかける。彼女は華やかな表通りから狭い路地裏に入り、入り組んだ道を歩いて行く。一体彼女は何処へ向かっているのだろうと思っていると、不意に、開けた道へ出た。
 そこは小さな市場が集まる広場だった。中央には何メートルもあるだろう大きなクリスマスツリーがあった。そのクリスマスツリーの下で、彼女が誰かと会っている。しかも、相手は誠実そうな顔立ちをした若い男性だった。彼女は持っていた紙袋達を何の迷いもなく男性に渡し、男性はコートの内ポケットから分厚い封筒を取り出して彼女に渡す。それから彼女の頭を撫でて微笑んでみせた。
 え?やっぱり貢ぎ物?というか、パパ活では!?
 その光景を見た瞬間、理性なんぞ頭の中から抜け落ちた僕は走って彼女の元へ行く。男性と彼女の間に割って入ってから二人の顔を交互に見て無理やり口角を上げた。

「これはこれは、監督生さん。こんなところでお会いするとは奇遇ですね。ところで、こちらの方はお知り合いですか?どうなんです?どちらさまですか?僕、ぜんっぜん知りませんでしたけど」

突如割り込んで来た僕に対し、彼女がわけが分からないと言わんばかりに眉を寄せる。一方、男性はきょとんとした表情を浮かべたかと思えば、すぐに人の良さそうな笑みを彼女に向けた。

「お友達かな?もしかして、君達約束あったの?ごめんね。悪いことしちゃった」

「いいえ。約束なんて全く」

「無理しなくていいんだよ」

「それよりも、早く孤児院に行きましょう。飾りつけ、子供達が楽しみに待っているでしょうから」

「君がそういうなら。でも、せっかくお友達に会ったのに。そうだ!何もお構いできないけどお友達もうちに来る?」

「え?アズール先輩もですか?」

二人で会話していたのに、二つの視線が唐突に僕に向けられて僕は思わず固まる。状況が飲み込めない僕に彼女が表情を変えず僕を見続ける。

「いや、だって、」

パパ活でもしてたのでは?そこに僕も同席しろと?と彼女に聞きたいが、それよりも僕は彼女と少しでも長く休日を一緒に過ごたいのが本音だ。
 僕が首を縦に振ると男性はほんわかと嬉しそうに笑ってから案内するように先を歩き出す。その後ろを彼女と僕が並んで歩いた。

「ところで、何処へ向かっているんですか?」

「え?孤児院ですけど」

当たり前のように歩いて行く二人に疑問を抱く僕は彼女に尋ねるが、彼女ときたら間髪入れずに答える。僕は質問をさらに続けた。

「何故、孤児院に?」

「学園長が寄付している孤児院に定期的に顔を出しているんです。それに、もうすぐクリスマスですから」

彼女が指で示した先を見ると、男性が持つ紙袋の中からラッピングされたプレゼントの他にリースやベル、そしてヤドリギが覗いていた。

「要するに、学園長のお使いです」

「え?先程の札束は?」

「札束!?」

普段冷静な彼女が目を真ん丸にして足を止めた。当然、僕も彼女の反応を前にして目を丸くする。そんな僕達の会話を聞いていた男性が楽しそうに笑った。

「さては君。パパ活やらホストやらと勘違いしたね。残念ながら君の推理はハズレ。僕は孤児院を管理する牧師だよ。君達の学園長とは古くからの悪友でね。ちなみに、彼女には孤児院で使うクリスマスパーティーの材料や子供達へのプレゼントの買い出しを頼んでいたんだ。さっき渡した封筒は札束じゃなくて、ディアが欲しがっていた極東の国の名産品の干し芋だよ」

「ほ、干し芋ですか!?」

流石にホスト相手に貢いでいるとは思ってないが、盛大な勘違いをしたことに気がついた僕は耳まで真っ赤に染まっていく。というか、干し芋を封筒に入れるなとツッコミたい。
 僕の反応を特に気にせず紙袋の中に再び視線を向けた彼女は男性に声をかけた。

「足を止めてしまいすみません。急ぎましょう。あの子達のために早くヤドリギを飾りつけないと。子供達を悪い存在から守ってくれる存在ですから」

淡々とそう言ってのける想い人の姿を僕はついじと目で見る。
 彼女に愛の告白が通じ、ヤドリギの下でキスを交わせる日が来るのはいつになるやらと思いながら。

2022.12.24
ヤドリギ|女監督生受け版ワンドロワンライ