
Bookso beautiful yet terrific.
マブ達も知り合いも帰省し、学園長はバカンスに行っちゃうし、私の年越しはいつもの日常に比べるとそんなに賑やかではない静かな雰囲気に包まれていた。
「ツイステッドワンダーランドの年越しは、国によって違うんだよ。賑やかに花火をあげてパーティーする国もあるし、除夜の鐘を聞きながら静かに過ごす国もある。千差万別というやつだね」
ゴーストの話を聞きながら、何処の異世界も国ごとに違う文化が発展してきたのは同じなんだなあと思いながら相槌を打つ。テレビで中継される除夜の鐘のボーンボーンという音を聞きながら蜜柑の皮を剥いてぱくりと食べた。うん。私にはこの年越しのスタイルが一番しっくり来る。
「子分〜。カウントダウン始まりそうになったらオレ様を起こすんだゾ〜」
私の隣で目をうつらうつらさせて丸くなるグリムにはいはいと笑いながらブランケットをかけてあげる。この時間まで一生懸命起きていたけど、グリムの睡魔は限界に達した。
かちり。時計の針が間もなく0時をさそうとしている。グリムの背中を撫でて軽く声をかけるが起きる気配がない。そんなこんなしているうちに驚くほど静かに年が明けた。
「今年もよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくね」
丁寧に頭を下げてゴーストとお互いに新年の挨拶をする。夢の中のグリムにもよろしくと声をかけた時だった。
本当に突然だった。オンボロ寮の外からとんでもない大きさの爆音が鳴り響く。何事かとグリムが飛び起きるほどに。私とグリムとゴーストは顔を見合わせてから勢いよく外に出た。
オンボロ寮の外ではとんでもない爆音が何発も辺りに鳴り響き、上空にはド派手な色彩の花火が打ち上がっていた。
「な、何事なんだゾ!?」
「あ!小エビちゃん達も来た〜」
呆気に取られる私達の前に姿を現したのは、2023年というサングラスをかけた不審者ではなくフロイド先輩だった。その後ろからタブレットを操作しながらジェイド先輩までやって来る。
「おやおや。これはみなさんお揃いで」
と、言いつつジェイド先輩がタブレットに指を滑らせるたびに爆音が辺りに鳴り響き夜空に花火が打ち上がっていく。
「監督生さんにグリムさんにゴーストさんではありませんか。あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたしますね」
いつもの穏やかな物言いで話すアズール先輩の姿は、頭にパーティー帽子、目元には祝2023年のサングラス、首からは今日の主役というタスキをかけている。おそらく、この場にいる誰よりも浮かれている格好だと思う。
「文化の違いかな?」
「文化の違いだね」
私とゴーストはひそひそと言う。そんな私達なんぞ気にせず、先輩達はにっこにこに笑いながら何処から出したのか両手いっぱいのパーティーグッズを見せつけてきた。
「これからパーティーだ!イェー!小エビちゃん達の分もあるよ〜」
「今夜は寝かせませんのでそのつもりで」
フロイド先輩とジェイド先輩がそう言ってのけてからグリムとゴースト達をぐいぐいと連れてオンボロ寮に入っていく。
「低カロリーの夜食もご用意しておりますのでご安心ください。さあ、監督生さんも寒いので中へ入りましょう」
にこりとサングラス越しに微笑むアズール先輩に促されて私も足を動かす。突然の賑やかな雰囲気の新年に切り替わり戸惑ってしまうが。
まあ、でも、文化の違いもいいか。なんて思いながら私の頬は緩むのだった。
2022.12.31