
Bookso beautiful yet terrific.
ボーディングスクールの入学式に、一際目立つ兄妹がいた。兄は金髪に星型のサングラス、妹はピンクの髪のツインテールにハート型のサングラス。ただ派手な格好だけではなく、サングラスの下に隠された兄妹の顔立ちはとても綺麗で整っている。だからこそ、この兄妹を知らない者はいなかった。
兄妹は目立つので噂だけが一人歩きしている。そのせいで私も二人の存在は話程度には知っているけど、実際に言葉を交わしたことはなかった。聞くところによると私にとって兄は先輩、妹は同級生に当たるらしい。らしいと言うのは、同級生とはいえ妹と同じ講義を受けたことがない。そりゃあ、クラスも選択する教科も違ければ当然のことだ。
現在。だから、この状況に私は困惑した。
「おまえ。僕の女にしてあげる」
かわいらしい見た目とは裏腹に、ドスのきいた声で私に言ってのける美少女の姿に私は息を呑む。長い指で軽く私の顎を摘んでクイッと上に向ける仕草に、この人絵になるなあとつい現実逃避する。いやいやいや、僕の女になれって何さ。
「肩にぶつかったことはお詫びします」
「おかげで僕の自慢のファッションが乱れただろ。だから、責任取って僕の女になれ」
「何故そうなるの!?」
「おまえ、よく見ればかわいい顔してるし。僕の引き立て役くらいになるだろ。だから、僕の女にしてやるって言ったわけ。ちゃんと理解できたか?」
当たり前だとドヤ顔で言ってのける目の前の美少女の姿に残念ながら私の理解が追いついて行かない。
そもそも私は、入学してから今までこの人とまともに話もしたことがない。たった今、たまたま肩がぶつかっちゃってその弾みで美少女のハート型のサングラスが若干ずり落ちただけの関係だ。しかも、ずれただけで地面に落ちて割れたわけではない。え?これ私が責任取る必要なくない?いや、確実にないよね!?
ちなみに兄の方は、ライたんのお眼鏡にかなうなんてやるじゃん!フー!ってうるさい。いや、おたくの妹さん何とかしなさいよ。
「無理!!!絶対無理!!!断固拒否します!!!」
そう叫んだ私は思いっきり相手の身体を押し退けてから逃げ出した。そんな私の姿に一瞬だけ目を丸くさせた妹は、ニヤリと口角を上げた。
「僕の誘いを断るなんて、おもしれー女」
こうして、ド派手な美少女with兄に付き纏われる前途多難なスクールライフが幕を開けることになるなんぞこの時の私はまだ知る由もなかったのだった。
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「という、夢を見たの。しかも初夢。なんだったのかな?あれってさ」
昼食を食べる手を止めて、はあと溜息を吐きながら話すマスターの姿に八九は思わず食べていた物を喉に詰まらせて咳き込んだ。一方、食堂内の別の席から盛大に咳き込む声が聞こえてくる。
「俺に聞かれても困るっつーか」
八九は思わずしどろもどろに答えた。彼女の夢に出てきた登場人物に物凄く知っている兄弟の姿と重なる。その時だった。
「初夢って言ったって所詮ただの夢だろ。疲れてるんだよおまえ。よく寝て忘れろ。いいな?絶対に忘れろよ。何が何でも思い出すんじゃねーぞ。それ夢だから」
「え?ああ、うん」
「分かったならいい。じゃーな」
ピンクの髪のツインテールではないが、八九の知り合いと同じコードネームを名乗るライク・ツーは彼女の元へやって来た早々そう言い、そして足早に去って行った。
「そっか。私、疲れてるんだ。うん。早く寝よう」
残された彼女はライク・ツーの言葉に自分を納得させて頷く。八九にしてみれば、洗脳じゃんとツッコミを入れたいが。
「まあ、その。お、お大事に?」
「ありがとう。八九」
彼女は控えめに微笑んでから食事する手を動かす。そんな彼女の姿を遠慮がちに見てから八九も食事を再開するのだった。
これ、次の原稿のネタになるんじゃね?と思いながら。
2023.01.06