
Bookso beautiful yet terrific.
エピローグを読み終えてから本を閉じる。深く息を吐いてからようやく辺りが暗いことに気がついた。ハッとして図書室の壁に設置してある時計を見るとそろそろ夕食の時間だった。すると、私のお腹も思い出したように小さく音を立てる。物語の世界にすっかりのめり込んで忘れていても、いざ夕食の時間を考えると本能で胃袋が食事を要求する。つい、一人苦笑いが溢れた。
しかし、目の前にいる人物が視界に入った瞬間、私の胃袋事情なんぞ頭の隅っこに追いやった。テーブルの向かい側に座り、突っ伏して眠るレオナ先輩の姿に私は息を呑む。そういえばとレオナ先輩に声をかけられはしたが一言二言だけ返してまた本の世界へ意識を集中させたことを思い出す。正直、もうとっくに私の元から去って行ったと勝手に思い込んでいたのでまずいことをしたと罪悪感に襲われた。
私は読み終えた本を片付けようと席を立ち、棚へ向かう。座席からそう遠くない棚へ行き、ぽっかりと空いているスペースに本を戻した。
「この俺を放っておいたまま自分はさっさと本を片付けて帰るつもりか?」
私の背後から聞こえた低い声に振り向くと、レオナ先輩が腕を組んだまま私を見下ろしていた。人聞き悪いなあと思いつつも、そもそも本に夢中になって不本意ではあるがレオナ先輩を放っておいてしまったのは事実だ。
「すみません。本を片付けてから声をかけようと思ってはいたのですが」
「だろうな」
レオナ先輩がちらりと図書室の壁に設置してある時計を見る。それから私に声をかけた。
「おまえ、飯は?」
レオナ先輩からの思わぬ問いに私は目を丸くする。すると、再び空腹を訴える胃袋が私の代わりに返事した。その音を耳にしたレオナ先輩は少し考え込む。それから私に背を向けて歩きながら口を開いた。
「毛玉はラギーにでも預けておけ。ちょうど寮生達が食堂に集まってる時間だろ」
「いや、でも、」
「おまえは出かける格好して俺のところに来い。マシな服着ろよ」
「ごめんなさい。仰っている意味が」
「口答えするなよ。草食動物のくせに俺の用件を無視して散々放っておいただろうが」
そうやって言われてしまえば文句は返せない。私はレオナ先輩の背中を追いかけながら返事した。
「分かりました。ただ、その。マシな服というのは?」
「デートに着る服に決まってんだろ」
間髪入れずに返されたレオナ先輩の言葉に私は魔の抜けた声を上げて立ち止まる。そんな私に対し、レオナ先輩も止まって振り向いた。
「何驚いてんだよ。おまえちゃんと返事しただろうが。俺に付き合えという問いに対し、いいですよってな」
いつそんな話にと思うが、正直、本の世界に夢中で覚えていない。レオナ先輩はそれを分かっているからこそ意地悪く笑ってみせた。
「ちゃんと用件を聞かないおまえが悪い。さて、俺は腹がへった。さっさと飯食いに行くぞ」
再び私に背を向けて歩き出したレオナ先輩の姿に私はどうしようと考え込む。でも、レオナ先輩は優しい人だからちゃんと話せば分かってくれるかなと思いその背中を追いかけたのだった。
その考えが甘いなんぞ微塵も思わずに。
2023.01.07
本能|女監督生受け版ワンドロワンライ