
Bookso beautiful yet terrific.
ボーンボーンという掛け時計の音にハッとして本から顔を上げると、時刻は日付を跨いでいた。1月18日。今日は、僕がこの世に生を受けた日。
読みかけの本を閉じてから僕は寮の自室を抜け出し、かつて廃墟だった場所へ向かう。今はオンボロ寮と呼ばれる場所には友人が住んでいた。
日付が変わった深夜なのだから彼女もとっくに眠っているだろうと思いつつも建物の外から様子を窺うと、彼女の自室と思しき部屋からはまだはっきりとした灯りがついていた。僕はつい、彼女の部屋のバルコニーに降り立ち、コツコツと窓を叩く。すると、窓越しに見える僕に気づいた彼女はすぐに窓を開けた。
「こんばんは、ツノ太郎。こんな時間にどうしたの?お散歩?」
「おまえに会いたくて来た」
僕の言葉に彼女は数回瞬きを繰り返す。それから彼女は何か納得した表情を浮かべて口を開いた。
「日付が変わったから、もう18日だね。お誕生日おめでとう、ツノ太郎。ツノ太郎にとって素敵な一年になりますように」
そう言ってから彼女はやんわりと目を細める。そんな彼女の姿に今度は僕が瞬きをする番だった。
「ああ、そうだな。おまえに祝福されるのは悪い気がしない」
彼女に言葉を返しながら頬が緩む。本音を言えば、僕が望んでいることは彼女からの祝福ではない。
「せっかく来てくれたし、お茶して行かない?」
「構わないぞ。ただ、おまえにとって夜更かしになるが」
「今日ぐらい起きてるよ。ツノ太郎と一緒に過ごせるのだから」
控えめに笑って言ってのける彼女に他意はない。それでも、彼女の友人としてではあるが共に夜更かしできる間柄の今に、僕は満足している。
僕が本当に望むもの。それは、彼女と少しでも長くお茶しながら他愛ない話をすることだ。
2023.01.18