Bookso beautiful yet terrific.

 別に大した理由があったわけではない。どうしても一人になりたくて、静かな場所が欲しかっただけだった。

「すんません、マスター。動かないでもらえますか?」

「ああ、うん。ごめんね」

 ケンタッキーに抱きしめられながら息を殺す。密着しているせいでお互いの体温と心音がよく伝わってきた。
 そもそも私達がいる場所は士官学校からそう遠くない公園だった。そこで子供達が前日に大量に積もった雪を使ってかまくらを作っているのを見つけて、かまくらなら一人になれるかなと思った私が子供達に混ざったのが全ての始まりだった。そして、素人の私が作ったかまくらは強度が全くなく、結果的に完成したかまくらの中に私が入った瞬間崩れて大量の雪に押し潰されたというわけだった。ちなみに、ケンタッキーはたまたま崩れ行くかまくらに遭遇して咄嗟に身を挺して私を守ってくれたのだ。

「巻き込んでしまってごめんなさい」

「マスターがご無事で何よりっすけど。次からはお一人でかまくらを作るのはやめてくださいね」

「反省します」

 二人で顔を見合わせてから、クスクス笑う。それにしても、雪の中は冷凍庫のように寒い。

「早く出ないと凍死しそう」

「ですよね」

ケンタッキーはおもむろに手を動かしてごそごそと雪の壁を弄る。それから、あ、と声を上げた。

「思ったより、崩れた雪の量なさそうっすよ。あまり上手じゃないかまくらでよかった。マスター、せーので動けます?」

「若干傷つくけど、まあいいや。大丈夫、行けるよ」

「よっしゃ。じゃあ、行くっすよ!」

せーの!という掛け声と共にお互いにガバッと身体を起こすと、ズポンという音と共に雪の外に出た。すると、姿を見せた私達を子供達がパッと輝いた表情で見る。それから安堵したように笑ってみせた。

「よかったー。お姉ちゃん達、出て来れて」

「お姉ちゃんの作るかまくらすっげー下手くそだったもんなあ」

子供達にそう言われてしまえば私は苦笑いするしかない。一方、ケンタッキーはぶるりと肩を震わせた。

「つーか、さっむ。とりあえず、寮に戻りましょう。俺、コーヒー淹れるんで」

ケンタッキーに視線を向けてから頷いた。次からは下手くそと呼ばれないようなかまくらを作ろうと私は意気込むのだった。

2023.01.23