Bookso beautiful yet terrific.

「あ!いたいた!監督生ちゃん」

 呼ばれて振り向くとケイト先輩が私の方に早足でやって来ていた。私が足を止めてケイト先輩に向き直ると、ケイト先輩は私の元に辿りつき動きを止めた。

「トレイくんが試作のケーキを作ったんだけど、いっぱい余っちゃって」

そう言ながらケイト先輩が私に差し出して来たのはケーキ用の白い箱だった。大きさは5号のデコレーションケーキがすっぽり入りそうだ。

「こんなにいいんですか?」

「余りだから遠慮しないで」

ニコニコと人の良さそうな笑みを浮かべるケイト先輩をじっと見つめてから、私は両手を差し出した。

「では、お言葉に甘えて。ありがとうございます」

「こちらこそ、めっちゃ助かる」

私の手にケーキの箱が乗せられる。中身はどんなデザインのケーキなのだろうと想像するだけで自然と頬が緩んだ。

「ちなみに!リドルくんから紅茶の茶葉も預かってまーす!」

「茶葉もですか?嬉しいです」

「俺からは、かわいいティーセットをプレゼントしちゃうよ」

おもむろにケイト先輩が指を鳴らすと、何処から現れたのかお洒落にラッピングされたティーセットが宙を漂い、ケイト先輩の手に渡る。あきらかに新品のそれに私は僅かに眉を寄せた。

「いただいてばかりで申し訳ないです」

「ぜーんぜん!俺が好きでやってるから気にしないで」

「ですが、」

「なんでもない日にプレゼントを買って、喜んでくれる妻の顔を想像するだけで楽しいじゃん。監督生ちゃんが驚いたり笑ったりするプレゼントを贈れるのは俺だけだよ」

冗談で言っているだろうケイト先輩の言葉に、私は数回瞬きをする。そんな私の反応を見て、心底楽しそうに笑うケイト先輩は私の背中を優しく叩いた。

「ほら、早くオンボロ寮に行こっか。今日はなんでもない日のティーパーティーしよう」

ケイト先輩に促されるまま私は歩き出す。ちらりと隣を歩くケイト先輩を見ると、ケイト先輩は何事もなかったかのように世間話を始めていたのだった。

2023.01.23