
Bookso beautiful yet terrific.
「好きなタイプ?」
「そうそう。アジームが好きになる女って想像つかないし」
クラスメイトに聞かれた質問に俺はうーんと首を捻る。俺の隣の席に座っているシルバーはこっくりこっくりと舟を漕いでいた。
「好きな女かあ。考えたことなかったな」
俺はさらに首を捻る。そもそも、アジーム家に産まれた時点で自由に恋愛なんぞできるわけがない。父ちゃんが決めた何処かの商人の娘と結婚するか、ジャミルが吟味して選んだ令嬢と結婚するか。とりあえず、将来は決まっている。
「そういうおまえ達は?」
答えに困って、反対にクラスメイト達に質問してみた。すると、クラスメイト達から帰ってきたのは男子高校生らしい発言だった。おっぱいが大きい子がいい、お尻が小さい子がいい、スレンダーで美脚がいいとか。
クラスメイト達の願望をうんうんと頷きながら相槌を打っていると、ふと、教室の窓の向こうに現れた監督生の姿に気がついた。監督生は両手にたくさんの本を持ったまま背筋を正して廊下を歩いている。
「悪い!俺ちょっと行ってくる!」
クラスメイト達に声をかけて席を立つが、クラスメイト達は話に夢中で適当に返事がきただけだった。シルバーも、ぐうと寝息を返すだけ。そのことに特に気にせず俺が教室を出ると、監督生が既に教室の前を通り過ぎたところだった。
「監督生!大丈夫か?」
足早に監督生の元へ行き声をかけると、監督生はやって来た俺を見つけて軽く会釈した。その隙に監督生の腕の中にある本達をパッと取ると、監督生の表情が少し曇る。
「お気遣いありがとうございます。大丈夫です」
「遠慮するなって。で?何処に持って行くんだ?」
監督生が迷う素振りを見せるが、やがて、緩く眉を下げていく。
「魔法薬学室です」
「分かった!じゃあ、一緒に行こう!」
「ありがとうございます」
きちんと頭を下げて礼を述べる監督生に俺はからりと笑ってみせた。
それから二人並んで魔法薬学室までの道中を歩く。
「そういえばジャミルがさ、」
なんて世間話程度の話題を振っても、監督生は相槌を打って黙って聞いてくれている。喜怒哀楽激しい方ではないが、監督生が退屈そうにしているわけではないことは分かる。そこでふと、先程クラスメイト達と話していた内容を思い出した。アジームの好きなタイプってどんな子?という質問を。
「あ。この辺りでもう大丈夫です。ありがとうございました」
魔法薬学室付近の廊下で足を止めた監督生が俺に向き直る。折り目正しく一礼した監督生は俺が持つ本達に手を伸ばして掴んだ。そっと優しく本達が引っ張られる感触に気づくが、俺は手を離せずにいた。そんな俺の様子に監督生が瞬きをしてからじっと視線を合わせてくる。困惑を露わにさせる監督生の瞳を見て、つい頬が緩んでいく。
「俺さ。結婚するなら、おまえがいいな」
監督生が口を引き結ぶ。監督生の瞬きの回数が明らかに増えていくが、そういう監督生の素直な表情にかわいいと思った。
2023.01.23