
Bookso beautiful yet terrific.
本日の体力育成は陸上競技だった。100メートル走を終えたリリアは次の種目が設置してあるグラウンド内を移動する。しかし、何かに追いかけられているだろう監督生の姿を見つけたリリアは足を止めた。リリアの視線の先にいる監督生は困った表情のまま一目散に走って行く。その監督生の後ろから追ってくるのはマンドラゴラの群れだった。監督生がマンドラゴラに追いかけられるようなことをするとは思えないが、とリリアは首を傾げるが、悠長なことを言っている場合ではない。
リリアは音もなく監督生の目の前に出ると、監督生が瞬きする間も与えず監督生の背中と膝裏に手をまわして抱きあげる。そのまま軽やかに宙を切って校舎の屋上に飛び乗って見せた。
マンドラゴラの大群は目標を突然失い困惑したようにきょろきょろと辺りを見回している。そこにちょうど現れた別の生徒達と目が合ったらしいマンドラゴラ達は一目散に今度はそちらへ向かって走って行った。
「もう大丈夫じゃ。怪我はないか?」
「あ。ありがとう、ございます、」
マンドラゴラ達が去って行ったのを確認してからリリアが監督生に声をかけると、監督生は頬を染めてやんわりと目を逸らした。
「おぬし。さては照れておるな?」
「いや、そういうわけでは」
「嘘は行かんぞ」
ずいとわざとリリアが顔を近づけると、監督生は嫌でもリリアと目を合わせることになる。至近距離でニコニコと微笑むリリアを前にして、監督生の頬にさらに赤みが増した。
「相変わらず素直で良い。このまま食ってやりたくなるのう」
「やめてください」
監督生の手がトンとリリアの胸板を軽く叩く。遠慮するような弱々しい手つきにリリアはさらに嬉しくなった。
「ところで。何故おぬしはマンドラゴラに追いかけられていたのじゃ?」
唐突に話題を変えたリリアはパッと監督生の顔から距離を取る。少しだけ距離ができたことに監督生は首を傾げつつも、質問に答えた。
「植物園でふざけあいっこしてるクラスメイト達の魔法に巻き込まれてしまいまして。確か、マンドラゴラの友達になる魔法だったと思うのですが」
「おぬしの話を聞くに、それが起きたのは授業中のはずじゃが。今頃クルーウェルが怒り狂っているじゃろう」
リリアの言葉に監督生が苦笑いを浮かべた。リリアはとりあえず無事そうな監督生の姿にホッとする。それから、もう一度ずいと監督生の顔に自らの顔を近づけた。
「悪戯好きのおぬしのクラスメイト達にはあとでわしからきつく言っておこう。誰の女に手を出したのか分からせてやらねば」
監督生が一瞬目を丸くしたかと思えば、ボンッと音を立てて顔を真っ赤に染めた。それを見てリリアはニンマリと笑って言ったのだった。
「くふふ。かわいらしいやつじゃ。これくらいで照れておると身が持たぬぞ。お互いに学園を卒業したら、毎晩のように食ってやるから覚悟しておくことじゃな」
2023.01.23