Bookso beautiful yet terrific.

「結婚しよう」

 突然言われた言葉に私は驚いて咳き込んだ。一方ジャミル先輩はすっと向かいの席から立ち上がり、移動して私の背中を優しく摩ってくれる。

「すみません。ありがとうございます」

「大事なくてよかった。熱かったか?」

「え?そうじゃなくて」

「遠慮しなくていい。次からは温度に気をつけよう」

そう言ってからジャミル先輩は私が持ったままのカップをさっと奪っていく。ぽかんと口を開けてジャミル先輩の背中を視線で追いかけていると、その場に居合わせたスカラビア寮生達と目が合った。

「今の聞き間違いか?」

「あのバイパー副寮長がこんなところでプロポーズするか?」

「いや、でも、」

スカラビア寮生達がひそひそと話しながら首を傾げる。それもそのはず。私がジャミル先輩と一緒にお茶している場所はスカラビア寮の談話室だ。当然、多くのスカラビア寮生達が集まり、目もある。

「今度はぬるめにしておいたぞ。火傷に気をつけて飲んでくれ」

「あ。ありがとう、ございます、かな?」

「不満そうだな。もう少し冷ました方がいいか?」

私の元へ戻ってきたジャミル先輩は、私が瞬きする間もなく新しくお茶を淹れたカップをおもむろに自らの口に近づけてふーふーと冷まし始めた。

「ジャミル副寮長、過保護すぎじゃね?」

「見てるこっちが恥ずかしくなるわ」

ひそひそと話すスカラビア寮生達の視線が物凄く痛い。ジャミル先輩は周りの反応なんぞ気にせず、ようやくふーふーし終えたカップを私に手渡した。

「さあ。飲んでくれ」

「いただきます」

私がカップに口をつけるのを見てからジャミル先輩は再び私の向かい側の席に座る。それから、穏やかな表情を浮かべて私にじっと視線を向けた。

「俺と結婚しよう。幸せにする」

動揺して私はまた激しく咳き込んだ。ジャミル先輩はさっと立ち上がってから移動して私の背中を優しく撫でる。

「熱かったか?次はもっとよく冷ましてこよう」

「いや、そういうわけでは、」

「遠慮はいらない。君が飲むお茶もスープも、俺がふーふーして冷ましてやる。これから先もずっと」

私がジャミル先輩を見上げると、ジャミル先輩はとても優しい表情を浮かべていた。

「返事は今この場で聞かせてくれ。ここにいる人間全員が証人だ」

さらりと言ってのけるジャミル先輩の言葉に対し、私が目を丸くするのと同時に、談話室にいたスカラビア寮生達全員の肩が跳ねる。そんな私達の反応なんぞ分かりきっていたジャミル先輩は勝ち誇るような笑みを浮かべてみせたのだった。

2023.01.25