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 図書室に行ったら、隣同士の席に座るアズールと小エビちゃんがいた。二人はずいぶんと近い距離でひそひそと話している。アズールは教科書の何処かを指で示し、それを見た小エビちゃんが自分のノートにペンを走らせていく。その姿に、アズールが小エビちゃんに勉強を教えていることはすぐに分かった。

「この問題を解いてみましょう」

「方程式。確かこれだった気がします」

「正解です。短時間でよく覚えましたね」

「アズール先輩のおかげです」

 背後から近づいて二人を驚かせてやろうと思ったのに、会話を聞いた瞬間、足が動かなくなった。時折お互いに視線を合わせて微笑みあう姿に、俺は何故か声をかけてはいけない気がした。
 急につまらなくなって図書室を出る。頭の中に仲良さそうなアズールと小エビちゃんの顔が残り、それが俺を無性に苛々させた。

「おや、フロイド。ご機嫌ななめですね」

「ジェイドじゃん。別にご機嫌ななめじゃねーし」

「さては。好意を寄せる女性が別の誰かと仲良さげだったのでしょう」

「は?」

 突然現れたジェイドが、これまた突拍子もないことを口にした。わけが分からず目を丸くする俺を余所にに、ジェイドは頬を緩めた。

「実は以前からアズールが監督生さんに好意を寄せていることを存じていました。ついでに、オクタヴィネル寮生の中に何人か監督生さん狙いがいることも」

「何それ?マジで?」

「僕が知る限りですと、彼女のクラスメイトも何人か。そうそう。あのリドルさんとカリムさんとシルバーさんとジャミルさんもですよ」

「はあ!?」

にこりと笑うジェイドに対し、俺は目を細める。そんな話、今まで一度も聞いたことないけど。でも、ジェイドが言うなら本当のことなのだろう。

「小エビちゃんが誰かの番になるのは嫌だな。ジェイドに言われて気づくとか俺だっさ」

「恋とはそういうものですよ。たぶん」

「とりあえず。小エビちゃん奪ってくる」

「ええ。ぜひ、そうしてください」

 俺はジェイドをその場に残して図書室に引き返す。それからずんずんと歩き相変わらず仲良さげに寄り添うアズールと小エビちゃんの正面の席に陣取った。

「小エビちゃんはこれから先、俺の番になるの。だからもうちょっかい出さないでよね」

キッとアズールを睨むと、アズールは目を丸くする。だけどすぐに、ふっと頬を緩ませた。

「だそうですよ、監督生さん」

アズールは小エビちゃんに声をかけてから立ち上がる。ふと、アズールは今思い出したと言わんばかりの表情で俺に言ってのけた。

「勘違いしているといけないので言っておきますが、監督生さんに好意を寄せているのは今のところフロイドだけですよ」

「は?」

「僕もリドルさん達も、うちの寮生達も。監督生さんはかわいい後輩の一人です」

「えー?だって、ジェイドが、」

「あー、そうそう。彼女のクラスメイト達がどう思っているかは分かりませんのでそこは頑張ってください」

さらりと言ったアズールはさっさといなくなってしまった。残された俺はぽかんと口を開ける。一方、ずっと黙っていた小エビちゃんは茹でた海老のように顔を真っ赤に染めていた。

2023.01.25