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「俺は、マスターのことが好きだ」

「ありがとう、マークス」

 さらりと返すマスターの姿にマークスは絶句する。マスターはいつも俺のことを見てるのでは?と思っていただけに、あまりにもあっさりとした彼女の返しにマークスは眉を寄せて首を傾げた。

「あ。もうこんな時間。私のクラス、これから野外演習なの。またね、マークス」

ひらりと手を振ってから足早に去って行く彼女の姿にマークスはぽかんと口を開ける。それから、さらに首を傾げた。

「なんか、思ってたのと違う」

「そりゃあそうだろ。雰囲気とか考えろよ」

 その場に立ち尽くすマークスの姿を見つけた八九がぼそりとそう言った。マークスは八九に向き直ると、難しい表情のまま質問する。

「俺の何が間違っていたんだ?」

「おいおいマジか。誰だって、こんなところで告白されてもピンとこないだろ」

八九の言うこんなところというのは、食堂のことだった。つまり、マークスは昼食を終えて返却カウンターに食器を返す道中に思い立って彼女に愛の告白をしたのである。

「アンタはそういうの詳しいのか?」

マークスの言う、そういうのというのは、つまりそれだろう。八九は思いっきり顔を顰めてやった。

「それはパリピに聞けよ」

「パリピ?」

「キラキラした陽キャとかさ」

「陽キャ?」

八九の言葉にマークスはこてんと首を傾げる。マークスにとってキラキラした人間といえばやっぱりマスターだった。だけど、今の話を思うと、それは何か違うような気がした。

「もう少し、考えてみる」

言葉少なめにマークスが言ってのける。マークスの悩める姿に八九は余計なことは言わずマークスの肩を軽く叩くのだった。頑張れよ、という意味を込めて。

2023.01.25