
Bookso beautiful yet terrific.
コンコンと部屋の扉をノックしても、中からの返事がない。扉の外から部屋の主の名前を呼んでも、反応はない。寮室にいないのならばと踵を返すと、外から微かに聞こえる賑やかな声に気づく。廊下の窓から様子を窺うと、私が探している人物が二人の貴銃士に囲まれながら画材に何やら描いていた。
寮を出て庭の一角にできた小さな集まりを目指して歩いていると、段々と話の内容が耳に入ってきた。
「よく描けてるな。すげえ」
「マスターそっくりじゃん。これ見たら喜ぶよな!絶対に!」
ケンタッキーとジョージの言葉にシャスポーは胸を張って何やら答えている。どうせ、当たり前だろうとでも言っているに違いない。
「こんなに上手く描くって、よっぽどマスターを観察してるってことだよな」
「そうだね。彼女の観察を欠かしたことはないよ」
ケンタッキーの質問にシャスポーがドヤ顔で返すのを顔を見なくても分かった。というか、話の内容からしてシャスポーが画材に描いているのは私の姿らしい。
「HAHA!シャスポーは本当に、マスターのことが大好きだな」
「大好きという言葉では言い表せられないよ」
私の足がぴたりと止まる。ジョージの言葉に返したシャスポーの声に、私はなんだか聞いてはいけない気がしてその場から少し離れた場所に隠れた。
「彼女は清廉潔白で、決して汚してはいけない存在なんだ。そこにいるだけで崇高で、美しい。だから、彼女の絵も本物と同じ雰囲気を表現したくて」
シャスポーの語る私の人物像に首を傾げた。かなり神格化しすぎているシャスポーから見た私ってどうなの?と思う。
「つまり、よく分からないんだけど」
「マスターを絵にするほど大好きってことか?」
ケンタッキーとジョージがそれぞれ首を傾げているのだろう。それに対し、シャスポーは声色を変えずに言ってのけた。
「大好きというレベルではない。心の底から燃え上がる熱量をどうしようもできずにいるほど、愛しているということだよ」
私は思わず数回瞬きをする。そして、たった今言われた言葉の意味を理解して固まった。
シャスポーの胸の内を知ってしまった以上、これからどう接していけばいいのか分からない。
2023.01.28