Bookso beautiful yet terrific.

 最近もやもやする。グラースが誰彼構わず声をかけて歩くのはいつものことなのに、何故か見ていて気分が悪い。

「やあ小鳥ちゃん。僕と一緒にランチどう?」

私の気も知らないグラースは突如現れては私の隣にいた友人をデートに誘う。デートに誘われた友人はグラースの甘いルックスに頬を染めてすぐに釣られた。溜息混じりにグラースを見ると、グラースがあからさまに私から目を逸らす。それから友人の背中に手を当ててさっさとデートに出かけて行った。
 私は踵を返してずんずんと歩く。この苛々をどうにかしたくて食堂に駆け込みいつもの三倍の量のランチを頼んだ。

「はあ!?おまえ正気!?」

「ま、マスターちゃん!?」

たまたま居合わせたライク・ツーとタバティエールの言葉に私はぐっと唇を噛む。いただきますと挨拶してからいつも食べない量を無心で食べた。

「やあマスター。ご機嫌ななめだね」

 無我夢中で食事しているとシャスポーが声をかけてきた。私はじとりとシャスポーを睨んでから食事を続ける。例のシャスポーを前にしたライク・ツーとタバティエールは呆れた表情を浮かべた。

「お花ちゃんや小鳥ちゃんのことはデートに誘うくせにマスターである私はガン無視」

「それはそれは。酷いね、グラースは」

私の隣に座ってきたシャスポーはとても近い距離で頬杖をついてにこやかに微笑む。私はコップに満タンに入った水を一気に飲み干してから言ってやった。

「グラースのことがほんっとよく分からない」

「そう?分かりやすいと思うけど」

「私だって、」

ハタと私は思う。私だって?一体私はグラースに何を望んでいるのだろうか。

「あーあ。まったく。早くそうやって言ってくれればいいのに」

 不意に、シャスポーの手が私の頬に触れる。そして、シャスポーの姿には似つかわしくない意地の悪い笑みを浮かべてみせた。

「僕はてっきり、脈なしかと思ってた。どうせ好きなのは僕だけってね。まさか、こんなに嫉妬心剥き出しのマスターが見られるとはな。ある意味、作戦成功ってところか」

私は食べる手を止めてもう一度じとりと睨む。最初から目の前に現れたシャスポーの正体なんぞ分かりきっていたが、それよりも今は見た目がシャスポーのグラースには文句しかない。

「というか、私の友達とデートに行ったんじゃなかったの?」

「今日とは言ってねえよ」

勝ち誇った顔で言ってのけるグラースに心底呆れる。そのグラースの後ろの方から、グラースの姿に気づいた本物のシャスポーが物凄い勢いでやって来るところだった。勿論、鬼の形相で。

「ったく。痴話喧嘩は余所でやれっての」

「まったくその通りだ」

 それまでずっと黙ったまま成り行きを見守っていたライク・ツーとタバティエールが呆れを孕んだ文句を口にしたのだった。

2023.01.28