Bookso beautiful yet terrific.

 教室の前の廊下でクラスメイト達と談笑していると、急に人垣が散っていった。それに気づいたクラスメイト達と私がそちらを見ると、その原因である茨の谷の次期王がこちらに向かって歩いて来ていた。

「人の子、探したぞ」

私の目の前で立ち止まった彼は開口一番にそう言った。クラスメイト達は彼が私に用事があると分かった瞬間、理由をつけてさっさと教室の中へ戻って行く。

「どうしたの?」

彼が諸々の事情で避けられているのはいつものことなので気にせず彼に問いかけると、彼は腕を組む。それからじっと私の目を覗き込んできた。

「妙な噂を耳にしてな」

「噂?」

「おまえがクロウリーの元へ嫁ぐという話だ」

あまりにもとんでもない噂話に私は大きく目を見開いた。私が?学園長の元に?一体何故?と困惑するが、驚きすぎて言葉が出てこなかった。

「それで。どうなんだ?」

ムスッと不機嫌を露わにさせた表情を浮かべた彼は再度事実確認をしてくる。ありえないにも程があるそれに私はつい吹き出してしまった。

「なんでそんな話に。ありえないって」

「本当か?」

「嘘ついてどうするの。学園長もとんでもない噂話に驚いてひっくり返ると思うよ」

ふふふと笑い続ける私の顔を彼は凝視していたが、やがて、心底ホッとした表情を浮かべる。それからやんわりと目を細めてみせた。

「それを聞いて安心した。おまえはいずれ僕と一緒に茨の谷で暮らすことになるのだから、次からは妙な噂話を立てられないよう気をつけることだな」

「ん?」

さらっと言ってのけた彼の言葉を疑問に思う前に、彼はくるりと私に背を向けてさっさと踵を返して行った。
 残された私は、ただただ困惑するだけだった。

2023.01.28