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 本当になんでもない日だった。誕生日でも、優秀な成績を残したわけでも、本当になんでもないただの一日だった。
 それなのに放課後、1-Aの教室にやって来たジェイド先輩の手にはとても大きな花束があった。

「監督生さん。受け取ってください」

ジェイド先輩は片膝をつき、両手で花束を差し出してくる。にっこりと微笑むジェイド先輩に対し、私は思わず顔が引きつる。

「いや、その。こんな高価な物は受け取れません」

「何故ですか?せっかく見繕いましたのに」

ほんの少しだけ悲しそうな表情をされても、私の心は揺らがない。ジェイド先輩はたまに泣き真似をするような人だ。これも演技に違いない。

「どうしても受け取らないと仰るのなら、仕方ありません。この花束は捨てましょう」

「捨ててしまうのは、ちょっと」

「では、あなたが受け取ってくれますよね?」

私の言葉を拾ったジェイド先輩は、片膝をつくのをやめて立ち上がり、ずいと花束を私の目の前に寄越した。あまりにも近い花束に咄嗟に手で遮ろうとすれば、それを好機と捉えたらしいジェイド先輩によって無理やり押しつけられてしまう。結果的に、私は大きな花束を不本意ではあるが受け取るはめになった。

「僕の気持ちを受け取ってくださるなんて、とても嬉しいです。生涯、大切にしますね」

にこりと満足気にジェイド先輩が言ってのけるが、私は納得いかない。

「いやいやいや。受け取れません」

だいたい生涯大切にするって何さ。花束一つで何故そんな壮大な話になるのだろう。そこで、ハタと気づく。私は当初から思っていた疑問を口にした。

「あの。何故花束を、私に?」

「おや。僕の真意が伝わっていないとは、困りました」

ニヤニヤと答えるジェイド先輩は全く困ってない。ジェイド先輩はふふふと小さく笑ってから再度口を開いた。

「僕の生涯をあなたに捧げます。だから、あなたの生涯も僕にくださいね。ああ、そうそう。返事はもう分かってますのでご安心を」

「え?返事なんてしてませんが」

「僕の気持ちをしっかりと受け取ってくれました。たった今」

たった今?と思いながら花束を見る。その瞬間、私はジェイド先輩の策略に嵌ったことに気がついて眉を寄せる。だけど、ジェイド先輩らしいあまりにも早すぎるプロポーズにまあいいかと思った私は頬を緩めた。

2023.01.28