Bookso beautiful yet terrific.

 休日のある日のことだった。今日は天気が良いので麓の街へ買い物に行こうかなと思っていた時だった。
 オンボロ寮内にチャイムの音が鳴り響くので反応したところに、ちょうどグリムが応対したようで客人を談話室まで連れて来た。

「おはよう。単刀直入に言うわ。アンタの時間、アタシにちょうだい」

 談話室にやって来た早々、そう言い放ったヴィル先輩の姿に私は挨拶すら忘れて瞬きしてしまう。一方、グリムもヴィル先輩の思わぬ言葉にきょとんとした。

「それで。返事は?」

ヴィル先輩の大層美しい顔が歪む。これで断ったらあとが怖い気がした。ちらりとグリムを見ると、グリムも溜息混じりに私を見る。その表情は、めんどくさいことになる前に行って来いと書いてあった。

「はい。行きます」

「素直でよろしい」

私の返事にヴィル先輩の表情が緩んだ。それから数分後、バッグを持ってヴィル先輩の背中を追いかけたのだった。
 特に行き先も告げられないままやって来た場所は麓の街にある家具屋だった。

「何か気に入った家具はある?」

「気に入ったと言われても」

「それじゃあ、デザインが好みの物は?」

 家具屋に来てからヴィル先輩はずっと色んな家具を示しては、どう思う?を繰り返している。一方私は、突然のことに曖昧な返事しかできなかった。だって、そもそも欲しい家具なんぞ特にないし。

「何か、欲しい家具をお探しですか?」

 意を決してヴィル先輩に質問すると、ヴィル先輩が家具から私に視線を向けた。少しの間、じっと私の目を見つめたかと思えば、小さく息を吐いた。

「そうよね。こんなの、アタシらしくないわ」

そう口にしてからヴィル先輩は眉を寄せて苦笑いを浮かべる。それから考える様子を見せては続けた。

「恋人と同棲する役を演じるのに、身が入らないのよ。勿論、最善を尽くして役に投じてる。だけど、何かが違う」

ヴィル先輩の目と目が合った。すっと伸ばされた手が私の頬を撫でてくる。突然の行動に疑問に思っていると、ヴィル先輩は相変わらず美しく微笑んでみせた。

「アタシ、気がついたの。いくら役とはいえ、自分の気持ちを欺くことなんてできないわ」

それは自惚れだろうか。ヴィル先輩の言葉に、私は口を引き結ぶ。この話を私にするなんて、もしかしてと思ってしまうではないか。
 ふと、ヴィル先輩の手が離れていく。ヴィル先輩の手の温もりが名残り惜しくてつい目で追ってしまう。そんな私に対し、ヴィル先輩が小さく笑った。

「欲しい家具、いつかの日までに決めておきなさい。ちゃんと準備ができたら、最上級のシナリオを用意してプロポーズしてあげる。それまで、待ってて」

2023.02.04