
Bookso beautiful yet terrific.
こんな気持ちを持ってしまったことに罪悪感はある。私はマスターで、相手は貴銃士だ。いくら人の形をとっていても、彼等が銃であることに変わりはない。それでも、私の心はとても正直で、影の薄い貴銃士をいつも目で追っていた。
ひっそりと、こっそりと、想うだけなら自由だ。言い換えれば、本人にも周りにもこの気持ちがバレなければいい。
私は今日も彼の姿を探していた。今日は任務で連合軍ドイツ支部へ訪れる日。不謹慎にも、他国の地理にはどうしたって疎い私には好都合だった。何故なら、あれが分からないこれが分からないと迷惑をかけない程度に質問という名の会話が彼とできる。本当に、私は身勝手な女。下心しかない自分自身に呆れてくる。
「あ。いた」
前触れもなく、私の背後から声をかけられた。私はずっと焦がれた想い人の声に嬉しくなってつい勢いよく振り向いた。私のあまりにも早い反応に驚いたらしい彼は目を丸くさせる。だけどすぐに、僅かに頬を緩めてみせた。
「探したで」
聞き慣れない言葉に今度は私が目を丸くする番だった。彼は私の反応に視線を外し、少しだけ気まずそうに口籠った。
「は、八九の。国の言葉、らしくて」
ゴーストの言い分に私は瞬きをした。日本語の真似事だろうか。もしかしたら、私が慣れない場所に緊張していると思って彼なりの冗談だったのかもしれない。
「ゴーストは物知りだね」
そう返しながら頬が緩む。彼の気遣いだと勝手に解釈して喜んでしまう私はどうしようもないほど恋に溺れている。
「あんさんにそう言われると。照れる」
私の言葉に、照れくさそうに笑う彼に対し、きゅんと胸の奥が鳴った。これじゃあ、マスター失格だ。
私は軽く咳払いをしてから彼の側に一歩近づく。それから、制服のポケットからドイツ支部周辺のマップを取り出して彼に見せた。
「この場所に行きたいの。ここに、任務でお世話になる上官がいると聞いたのだけど」
「ああ。ここな」
「一緒に来てくれる?」
「うん。勿論」
快く返事をくれた彼は私の手からマップを取り、丁寧に折り畳んで私に返した。私がマップをポケットの中に戻すのを確認してから、おもむろにすっと手を伸ばされた。
「ほな。行こう」
あまりに流れるような仕種で差し出された手に私は瞬きした。だけど、瞬時に状況を理解しては、つい頬に熱を集めていく。
「ずるい」
ぽつりと溢して俯く私の気持ちなんぞ彼には分からない。彼のことをずっと好きで、必死に気持ちを押し殺してきたのに、彼はただ紳士的にエスコートするために何の躊躇もなく私に手を差し出してくるではないか。
「ずるいのは、どっちや」
俯く私を無視し、そっと手が取られた。私が顔を上げるのと同時に、目の前に彼の顔があった。瞬きする間もなく触れた唇に、私の頭の中が真っ白になっていく。
「好き。あんさんもやろ?」
ずっと欲していた彼からの言葉に、私は先のことも考えないで素直に頷いていた。
2023.02.10