Bookso beautiful yet terrific.

 最近、十手に避けられているような気がする。部屋をノックしても返事がないし、食堂で見つけて声をかけても一言二言話せばすぐに去って行く。中庭の椅子に座っているかと思えば、ずいぶんと思い詰めたような表情を浮かべている。どうしたの?と声をかけても、十手からは、大丈夫だよしか返ってこなかった。
 そんな日々に痺れを切らした私は、ある日、果たし状を握りしめて十手の部屋に向かった。

「十手!話があるの!この果たし状を受け取って!」

「は、果たし状!?」

ガタンガタンと大きな音が十手の部屋の中から響いてきた。十手の素っ頓狂の声と一緒に。
 すぐに十手の部屋の扉が開かれ、十手の困惑した顔が覗く。それに構わず私はぐいぐいと十手の部屋の中に足を踏み入れ、がちゃんと扉を閉めてやった。

「果たし状なんて言葉、誰に教わったんだい?」

「邑田に聞いた。十手と面と向かって話すにはどうしたらいい?と相談したら、果たし状を渡せば良いってね」

「いやいやいや。だからって」

十手はうーんと顔を顰めつつも、果たし状は受け取ってくれた。

「最近、よく悩んでるから。私じゃあ、頼りない?」

私が十手に声をかけると、十手と目が合う。じっとこちらを見た十手は、またすぐに目を逸らした。

「そうじゃないんだ」

「それなら、聞いてもいい?」

「すまないが」

十手が気まずそうに口籠る。本当は十手のことが心配だから、色々話したい。だけど、それで十手のことを追い詰めるのは嫌だった。
 私は十手に近づき、肩を軽く叩く。それからいつものように笑ってみせた。

「話したくないならいいよ。無理に聞いてごめんなさい。だけど、私はずっと十手の味方だから」

十手の目が丸くなる。私が十手の肩から手を下ろすと、今度は十手の伸ばした手が私の頬を撫でた。

「ありがとう。いつか、話すよ。それまで、待っててくれるかい?」

「勿論!あ。果たし状もその時に受けるということかな?」

「果たし状のことは忘れてくれ。頼むから」

 十手が力なく笑った。だけど、最近の思い詰めた表情から僅かに色づいた微笑みに、私の心があたたかくなるのを感じた。

2023.02.10