Bookso beautiful yet terrific.

 八九は思いっきり引きつりそうになる表情を必死に堪えた。何故なら、八九の隣にいるマスターは、先程から男子生徒から引っ切りなしに贈り物をいただいている。

「先輩!こちらをどうぞ!」

「あなたのために用意しました」

「I love you!」

日頃の感謝というか、愛の告白ばかりじゃねーか!!!と八九は何度も心の中で叫ぶが我慢。当の彼女はイギリス人らしく、感謝の品にはありがとうと受け取り、愛の告白にはごめんなさい!を返している。それはもう清々しいほどに。これが日本人なら奥ゆかしく相手を傷つけないように優しさと義理で贈り物を受け取るのだから、八九にとっては彼女がイギリス人である意味助かった気もするのだった。
 さて。日本とは違い、男性から女性へ贈り物をするバレンタインデーの文化に、八九は悩んでいた。八九は今までの銃生、バレンタインデーなんぞ参加したことがない。唯一チョコレートをあげた女子(?)は世界帝軍時代にバレンタインデー当日に偶然任務が一緒になったツインテールのあの子と、盲目のピアニストだけである。ちなみにそのチョコレートだって、プロテイン入りの甘さ控えめチョコだ!って興味深そうにケーキ屋のショーケースを眺めてたから義理で買っただけだし。盲目のピアニストに関しては、いつも聴かせていただく演奏料として強制的に献上させられたものだった。
 八九はポケットの中を弄り、ラッピングされたチョコレートの箱を掴む。いつ彼女に渡そうかと悩んでいる時だった。

「在坂からの、贈り物だ」

突然やって来た在坂が彼女に贈り物を手渡した。彼女は自身の貴銃士からの贈り物に心底嬉しそうに受け取った。すると、在坂がくるりと向き直り八九を見上げる。それからこてんと首を傾げた。

「八九はもう渡したのか?」

「は?」

「邑田が、八九のは義理じゃなく本命だと言っていた」

「な、な!?ちょ、」

「マスターから八九への贈り物も、本命だと在坂は知ってる」

在坂の言葉に八九はあわあわと狼狽えた。しかし、在坂のもう一つの言葉に気づき、恐る恐る彼女の顔を見る。彼女は耳まで顔を真っ赤に染めたまま立ち尽くしていた。

「在坂の用事は終わった。次は八九の番だ」

そう言った在坂がさっさとその場から去って行く。
 残された八九と彼女は、お互いに顔を赤く染めたまま、照れくさそうにチョコレート交換をしたのだった。

2023.02.10