
Bookso beautiful yet terrific.
私の顔の横には邑田の両手がそれぞれある。後ろには壁、目の前は邑田。残念ながら逃げ場はない。
「ごめんなさい、邑田。急いでるの」
「目の前にいる男より急ぐ用なんぞない。気にするでないぞ」
にこりと邑田が言ってのけるが、気にしないわけにはいかない。私は教遠教官からの司令で、ただちにエンフィールドとスナイダーの兄弟喧嘩を止めに行かないといけないのだ。
「早くあの二人を何とかしないと」
「つい先程もそのように言っておったぞ」
「あれはシャスポーとグラースのことで」
「愛する男より、他の男を選ぶとは」
「そう言われてもなあ」
エンフィールドとスナイダーの前はシャスポーとグラースの兄弟喧嘩の仲裁に行っていた。ちなみに、その前はエルメとジーグブルートのちくちくとした言い合いを止めるはめになった。頼むから、これ以上兄弟喧嘩をしないでほしい。
思わず、溜息が出る。よくよく考えると、あっちこっちで起きる兄弟喧嘩を止める役目は私じゃなくてもいい気がする。
「やっぱりいいや」
「良いのか?」
「うん。あっちはそのうち収まるよ。それよりも、」
私は目の前にいる邑田の胸に甘えるように擦り寄った。すると、瞬時に私の背中に邑田の両手が回る。
「ほっほっほっ。素直で良い」
ぴったりとくっつく私を邑田が優しく受け入れてくれる。それから耳元で愛の言葉を囁くのだった。
2023.02.10