Bookso beautiful yet terrific.

 頭が痛い。別に立っていられないほどの痛みではないけど、重く鈍い感じが続いている。原因はただの寝不足なので大したことではない。昨日の任務、というより、今朝の日の入りにようやく終わった任務のおかげでほとんど寝てなかった。
 それでも、授業に遅れるのは嫌だったので平気なふりして何とか午前中はやり過ごした。あとはお昼休みを挟み、午後の授業を頑張るだけ。そう頭の中で理解していても身体は休息を求めて動きたくないらしく、適当に座る場所を見つけて勝手に休んでしまった。
 たまたま見つけた休息場所は誰もいないので静かだった。普段使われず物置代わりになっている空き教室の椅子に座り、何も考えずにぼーっとする。昼食を食べなきゃ、午後の授業の準備しなきゃ、確か狙撃演習だからマークスから本体借りないと。色々とやらなければならないことがあるのに、瞼が閉じていく。
 不意に、コツコツと誰かが空き教室に入って来る音がした。教官だったら怒られちゃうだろうなあと暢気に思いながら目を開けると、そっと目元を覆われて視界が暗くなった。

「おやすみなさい、マスター。良い夢を」

 声だけでも分かる。私の側にやって来たのはエンフィールドだった。今頃エンフィールドはにこやかに微笑んでいるに違いない。

「見えない」

反論しながらエンフィールドの手を退かそうと自分の手を動かすが、エンフィールドはそれを許してくれなかった。

「お疲れですから、何も見なくてもいいんですよ」

エンフィールドのよく分からない理屈に首を傾げたくなるが、今はエンフィールドの優しさに甘えたい気分だった。この手は気恥ずかしいので退かしてほしいのだけど。

「それにしても」

 ふと、エンフィールドの声色が何か考える素振りを見せた。私は特に気にせずエンフィールドの続きを待つ。エンフィールドは少しの間を置いてから口を開いた。

「こうして目元を隠して唇だけを晒す姿は、男心をくすぐるものがありますね」

「え?今なんか言った?」

「ですから。こう無防備に僕に委ねているあなたを見ると、意地悪したくなるんですよ。ええ!」

その瞬間、私はエンフィールドの手のことなんぞ忘れて勢いよく状態を起こした。私の側で立っていたらしいエンフィールドは、私の目覚めた姿に少しだけ目を丸くさせたかと思うと、いつものように微笑んでみせた。

「おはようございます、マスター。お顔が真っ赤ですが、いかがなさいましたか?」

私は何も言わずに唇を噛んだ。余裕綽々のエンフィールドが憎らしい。そんな私の何もかもお見通しのエンフィールドは爽やかな笑顔を浮かべるだけ。
 エンフィールドは油断ならない。改めてそう認識したのだった。

2023.02.10