Bookso beautiful yet terrific.

 困ったなあと思いつつも私は動けずにいた。魔法史の授業はとっくに終わっているが、私の肩に寄りかかってスースー眠るエペルを放っておくわけにもいかない。だけど、あまりにも綺麗な顔で心地良く眠るエペルを起こすのもかわいそうな気がする。それに、いつもなら居眠りする生徒に厳しいトレイン先生が、エペルの居眠りに気づかなかった。確かに、いつもきちんと授業を受けているエペルがまさか居眠りするとは思わないだろう。
 それにしてもと思いながらエペルの寝顔を無遠慮に見つめてしまう。今日の魔法史の授業はエペルのクラスと合同でラッキーとは思っていたが、寝顔まで拝めるだなんて私は大層運が良ろしいようで。

「一層のこと、キスして起こしちゃおうかなあ」

なんて言いながらもこの状況に嬉しくて頬が緩むのを止められない。大好きな人が隣にいて、幸せだ。
 すっと前触れもなく肩にかかる重みがなくなったのでそちらを見ると、エペルが欠伸を噛み殺しながら起きたところだった。

「おはよう。授業終わっちゃったよ」

「あ。やっちゃったな」

「トレイン先生のことなら心配いらないよ。エペルの居眠りに気づいてなかったしさ」

「よかった。ヴィルサンの耳に入ったらあとが怖いし」

眉を寄せて苦笑いを浮かべるエペルの姿に、かわいいなあと思う。まるで、しょんぼりと耳が垂れた子犬みたいだ。
 エペルがようやく起きたので私は筆記用具と教科書を手早く片付けて席を立つ。そろそろ教室を移動しないと次の授業が始まる時間のはずだ。

「あのさ」

不意に、エペルに呼ばれて振り向くと私の手が優しく握られた。瞬きする間もなくエペルの方に引き寄せられては唇が重なった。

「結婚したら、キスで起こして。約束」

唇を離したエペルは、そう言って意地悪く笑った。

2023.02.10