
Bookso beautiful yet terrific.
エースとデュースを訪ねてハーツラビュル寮に行くと、厨房で一人悩み込むトレイ先輩の姿を見つけた。
「こんにちは、トレイ先輩。お悩み中ですか?」
「ああ、監督生か。実は、新しいケーキのデコレーションがピンと来るものがなくてな」
私が声をかけると、トレイ先輩は苦笑いを浮かべる。それから何か思いついたようにハッとしては私に手招きした。
「ちょうどよかった。監督生の意見も聞いてみたい」
「私でお役に立てれば良いのですが」
トレイ先輩の言葉に返しながら、私は厨房にお邪魔する。調理台の上にはトレイ先輩がいくつか描いたケーキのデザインを記した紙が散らばっていた。
「思いつくままに描いてはみたが、どうにも納得がいかないというか」
「売れっ子の芸術家みたいですね」
「褒めてるつもりか?」
「勿論です」
やれやれという感じにトレイ先輩の首が横に振られていく。一方私は、散らばった紙を一つ一つじっくりと眺めた。
「どれも形にしたら綺麗なんだろうなあ」
「おまえならそう言うと思ったよ」
「というか、トレイ先輩が作ったケーキならみんな喜んで食べると思います」
「それは、おまえもか?」
「はい」
率直に思ったことを口にして私は笑ってみせた。トレイ先輩はじーっと私のことを見たかと思えば、ふっと頬を緩める。
「だったら、おまえの披露宴で出すウェディングケーキは俺が作るよ」
「わあ!嬉しい!」
トレイ先輩からの思わぬ言葉に私は心の底から喜んだ。
「ただし。俺がウェディングケーキを作るのは、おまえの結婚相手が俺だった場合のみだけどな」
にっこりと微笑んではさらりと言ってのけるトレイ先輩の姿に、私は目を丸くする。
「冗談、ですよね?」
「さあ。どうだろうな」
私の質問に曖昧に答えるトレイ先輩の真意は分からないままだった。
2023.02.17