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「知らなかったのか!?」

 セベクは目をまん丸にしながらそう言った。私はポットの中でじっくり蒸らした紅茶を二つのカップに注ぎ、一つはセベクに手渡し、もう一つは私の手中に取る。
 場所はオンボロ寮の談話室。三日後に提出しなければならない錬金術の課題をセベクと一緒に取り組み、一旦休憩を挟んだ時にこの話題が上がったのだった。ツイステッドワンダーランドは魔法だけで成り立っているわけではなく、科学の発展と共に成り立つと。

「知らなかったよ。正直、この世界の全てが魔法で構築されていると思ってたから」

「それならば。おまえが持つスマホは魔法で成り立っていることになるぞ」

「確かに。言われてみればそうだね」

「電波があるから電話ができる。電車も動く。魔力がないおまえのような人間でも家電が使える。もっとも、魔法と科学を掛け合わせた魔導工学のおかげという表現の方が正しいかもしれないな」

セベクの解説を聞き相槌を打った私はカップに口をつける。どうやら、このツイステッドワンダーランドの全てが魔法だけで成り立っているわけではないようだ。ナイトレイブンカレッジという名の魔法士養成学校の中にいると、360度魔法に囲まれた生活なので勘違いしてもおかしくはないと思うけど。
 私はカップをテーブルの上に置いてから、そういえばとセベクに尋ねた。

「それじゃあさ。茨の谷も科学で溢れてるの?」

私の質問に、セベクはカップに口をつけて一息に紅茶を飲み干してからテーブルの上に置く。

「そうでもないな。茨の谷は古くから魔法を使って生活しているから、科学がなくても支障はない。結論から言えば、国や地域によって違うということだ」

「そうなんだ。教えてくれてありがとう。勉強になったよ」

「貴様のような人間には色々と教えてやらねばならないからな。また聞くといい」

「何故だろう?無知な私が悪いんだけどさ。なーんか棘があるような気が」

「さて。無駄話は終わりだ。やるぞ!!!」

 気合を入れ直したセベクの掛け声によって、休憩は終了し、私達は再び課題に取り組んだ。しかし、かりかりとノートに文字を記入していたはずのセベクが、不意に口を開いた。

「いつか。茨の谷へ連れて行ってやろう。古くから大事にしている魔法に満ち溢れた生活を目にするのも、おまえにとっては良い刺激になるだろうし」

「わあ。行ってみたいな」

「そのためには、もう少し魔導工学というのを知る必要がある」

顔を上げたセベクの目がこちらを見たので視線が合った。

「来週。麓の街へ出かけるぞ」

目が合った瞬間に言われた言葉に私は瞬きをする。思わずセベクに聞き返すと、セベクはカッと目を見開いてはいつものように大きな声量で再度述べるのだった。

「聞こえなかったのか人間!!!来週、麓の街に行って社会科見学だ!!!いいな!!!絶対だぞ!!!!!」

「わ、分かったって」

至近距離で鼓膜が破れそうなほどの大きな声で言われて頭がくらくらする。そんな私から目を逸らしたセベクはまたノートに視線を戻した。

「行っておくが。その、二人で、だからな」

ぼそり。限りなく小さな声で呟いたそれに、私は目を丸くする。だけど、セベクの態度と声量に、デートのお誘いだと気がついた私は頬を緩めてから了承したのだった。

2023.02.26
周波数|女監督生受け版ワンドロワンライ