Bookso beautiful yet terrific.

 任務が長引いたせいで、士官学校に戻るには辺りが暗く危険だった。いくら貴銃士と士官候補生だからって無闇に山の中を歩くのは得策ではない。
 私とペンシルヴァニアは山中の拓けた場所に薪を燃やし、二人並んで地面の上に座る。それから持参していた軍の携帯食を食べながら夜空を眺めた。

「今日は天気が良くてよかったね」

「ああ。だが、夜の山は冷える。ほら。もっとこっちにおいで」

伸びてきた手が、ぐいと私の腰を抱くので、私は慌てて携帯食を飲み込んでからペンシルヴァニアに視線を向ける。予想以上の近い距離にペンシルヴァニアの顔があったので、目のやり場に困った私は思わず下を向いた。

「ん?どうかしたのか?」

「いや、その、」

「そうか。やっぱり冷えてきたか」

そう言ったペンシルヴァニアがさらに私に近づく。ぴったりとくっついたそれは街で見かける恋人同士みたいだった。流石にこの距離感は放っておくわけにもいかず私はペンシルヴァニアの胸板を両手で押した。

「よくない!これはよくない!」

「何故だ?」

「だって!これじゃあ近すぎるし!」

私の必死の抗議を聞いたペンシルヴァニアが目を丸くさせた。それから、何かに気づいたようにハッとしたペンシルヴァニアは、急に表情を崩して笑ってみせた。

「そんなことか。なら、問題はないな」

そう言うか早いか、ペンシルヴァニアの空いている方の手がすっと伸びて私の顎を軽く摘み、自らの顔をぐいと近づける。

「ずっと前から好きだった」

ペンシルヴァニアの片方の手は私の腰を抱き、もう片方の手は私の顎を摘んでいる。
 もう、逃げ場はなかった。

2023.03.01