
Bookso beautiful yet terrific.
「マスター!俺の気持ちだ。受け取ってほしい」
そう言ったローレンツはまるでいつぞやの日と同じように、片膝をついて花束を差し出してきた。私にだけど。
「いや、えーと、その。気持ちはありがたいんだけど」
私はローレンツに言葉を返しつつも辺りをちらりと見回す。案の定、この場に居合わせたクラスメイト達がひそひそ話しながら好奇心たっぷりの目でこちらを見ていた。
そもそも場所が悪すぎるのだ。ローレンツが花束を渡してきた私がいる場所というのが運動場のど真ん中だった。現在、私は授業中。そこにちょうどオーストリアからイギリスに到着したローレンツがやって来ては唐突に花束を渡してきたのである。勿論、教官ですら呆れを含んだ目をこちらに向けていた。
「何か不都合でもあるのか?」
「すっごく不都合ありますね。授業中なので」
ここでローレンツから花束を受け取ったら、残りの授業時間を花束片手に受けるしかない。花束持って匍匐前進なんぞ絶対にやりたくない。
「俺の気持ちが受け取れないと言うのか?」
「そうじゃないんだってば」
「俺は、真っ先に君に会いたくて仕方がなかったというのに」
そう言ったローレンツの表情が僅かに悲しそうな色を滲ませた。私は、ローレンツのこの表情に弱い。
「それじゃあ、今、受け取るね。どうもありがとう」
ローレンツの手から花束を受け取った瞬間、ローレンツの表情が華やいだ。分かりやすいローレンツの姿につい頬が緩んでしまう。
「次は、正式にプロポーズしに来る。期待しててくれ」
ふっとかっこよく微笑んでみせるローレンツの姿に胸の奥がきゅんと鳴る。惚れた弱みってやつには困ったものだ。
「あの、君達。今は授業中なのだが」
その後、痺れを切らした教官にツッコミを入れられたのは言うまでもない。
2023.03.01