Bookso beautiful yet terrific.

 コンコン。と部屋がノックされたので私は自室の鍵を開けようと扉の方を見た。その直後、がちゃりと鍵が開く音がし、扉も開く。何事もなかったかのように部屋の中に入って来たエンフィールドがにっこりと微笑んでみせた。

「マスター!お寛ぎのところ失礼しますね」

「その前に。今、鍵開けたよね?その鍵何処で手に入れたの?ここ、私の部屋なんだけど」

「マスターのことなら全て把握しております。マスターも、有事の際はぜひ僕を頼ってくださいね。ええ!」

「これって何処からツッコミ入れたらいいの?」

私の疑問はニコニコ顔のエンフィールドの耳には入らないらしくこれ以上は触れる気もなさそうだった。私は早々に鍵の出所は諦めて、本題に入った。

「それで。どうしたの?」

 私の質問に、エンフィールドの表情がぱあっと明るくなった。嫌な予感がしてつい身構えると、エンフィールドはお構いなしに私の元へ近づいては許可もなく私の襟からネクタイをしゅるしゅると解き、シャツのボタンを上から三つ外していった。

「ん?んんん!?何してるの!?」

「ああ、何ということでしょう。僕のかわいいマスターの柔肌に湿疹ができているとは」

「湿疹?」

エンフィールドからの思わぬ言葉に、とりあえずされたことは咎めずに聞き返した。エンフィールドは私の返しに大層悲しそうにしては私の鎖骨の辺りを自らの指先でなぞってみせる。

「僕が気づいたのは昨日の夜、部屋着のマスターとお会いした時だったのですが」

「昨日の夜にあなたと会ってませんが?」

「首筋に一つ。鎖骨の下に一つ。他にも背中に二つほどの湿疹がありました」

「人の話聞いてる?」

「あ。額にもぷつんとしたものが!僕としたことが。今になって気がつくだなんて。だいぶ赤く腫れているようですが、痛みはないですか?」

そう言って首を傾げるエンフィールドに対し、ツッコミを入れる気力が無くなっている。まあ、エンフィールドだし。その言葉で片付けてしまうほどエンフィールドの突拍子のない行動には慣れた。

「塗り薬をお持ちしましたので、これをお使いください」

「どうもありがとう」

「では、失礼しますね」

 にっこりと大層綺麗な顔で微笑んだエンフィールドが、そのまま手を動かして私のシャツのボタンの続きを外し出した。当然、私は声にならない悲鳴を上げながらエンフィールドのことを思いっきり突き飛ばしてやった。

「な、何するの!?」

「背中の湿疹は、お召し物を脱いでいただかないと塗ってあげられませんよ」

「頼んでないから!!!」

「ああ、マスター。あなたがそんなにお顔を真っ赤にさせて叫ぶだなんて普段はありえません。とっても痛みがおつらいのでしょう。早く、治して差し上げますね」

「違うから!!!ほんっとに違うから!!!!!」

「さあ。早く塗りましょうね」

にっこりと笑顔を浮かべたエンフィールドが私に近づいてくる。私にしてみれば、顔を真っ赤に染めてただ立ち尽くすわけにはいかなかった。これだけは、絶対に譲れないので。

「お顔を真っ赤に染めて身体を震わせるあなたに迫るのも、悪い気はしませんね。ですが、今日はお薬を塗って差し上げるだけですので、安心して僕にお任せください!ええ!」

と、自信満々に言ってのけるエンフィールドの言葉なんぞ信用できるわけがなかった。
 とりあえず、私は頭の中でいかにしてこの状況を回避するか考えるのだった。

2023.03.04