Bookso beautiful yet terrific.

「ああ、キミ。ちょうどよかった」

 一人廊下を歩いているとリドル先輩に引き止められた。なんだろうと思いながら振り向くと、リドル先輩は隠し切れない喜びを露わにさせて私の側にやって来た。

「実は、トレイに苺のタルトを焼くよう頼んである。夕食後のデザートには食べられるだろう」

「できたての苺のタルト、おいしそうですね」

「キミも気に入ると思うよ」

リドル先輩の頭の中は既に苺のタルトのことでいっぱいなのか、その表情は幸せそうだった。

「だから今日は、グリムと一緒にハーツラビュル寮に泊まりにおいで」

「よろしいんですか?」

「寧ろ、キミは嫌なのかい?」

「いいえ!嬉しいです。あ。それなら、エースとデュースに今晩お部屋に泊めてってお願いしないと」

「何故わざわざ男だらけの部屋に泊まる考えになるのか。まったく。不用心にもほどがあるよ」

 幸せそうな表情から一転。リドル先輩の表情が呆れたものに変わっていく。私にしてみれば、泊まりにおいでと言われたから、ならば友人達を頼ろうとしただけなのに。

「ハーツラビュル寮にも急な来客のためのゲストルームがある。今日はその部屋を使うように。いいね?」

「はい」

リドル先輩の言葉に、ハーツラビュル寮にもゲストルームがあるのかと思いつつ返事をすると、リドル先輩の表情がいつものキリッとした様子に戻っていく。

「夕食は18時から。遅れないように」

「はい!」

「では。キミが来るのを楽しみに待っているよ」

 用件が済んだらしいリドル先輩がくるりと私に背を向けて歩いて行った。だけど、何かを思い出したらしく、リドル先輩が再び私の元へ戻ってきた。

「今日は、寮生達と共に食事とデザートを愉しむけど。いつかは、二人だけで過ごしたいとボクは思うよ」

 思わず、瞬きを繰り返す。私の反応なんぞ最初から分かっていたらしいリドル先輩は、やんわりと頬を緩めていったのだった。

「学園を卒業して、仕事も軌道に乗って。その時に、改めて正式にキミに伝えるよ。それまで待っててくれるかい?」

2023.03.07