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「ちゃんと聞いてるのか!?人間!!!!!」

 目の前にいるセベクからそれはそれは大きな声で問われて私は瞬きを繰り返した。

「いや、まあ。聞いてるけどさ」

私はセベクから視線を外してテーブルの上に広げたままの筆記用具を見つめる。
 そもそも私とセベクは、たった今までオンボロ寮の談話室で一緒に課題をやっていたはずだった。それなのに、セベクは何の前触れもなく私に言ってきたのである。

「学園を卒業したら、僕と結婚して共に若様の護衛の任務につくか、僕と結婚していずれは僕の家の歯科医院を継ぐか、或いは、僕と結婚してすぐ子供を産むか、今すぐ選べ!!!!!」

と、こんなことを言われても困る。だいたい、私とセベクはそういう関係ではなく、ただの友人だ。
 つい、私の眉が寄っていく。それを瞬時に見つけたセベクが再び声を張り上げた。

「おい!!!僕を無視するな!!!!!」

セベクの声に私が顔を上げると、セベクは言葉と態度のわりには、意外にもその表情は耳まで真っ赤に染まっていた。この様子からして、セベクがふざけて先程の言葉を言っているわけではないことは理解できた。

「ごめんなさい、セベク。セベクのことは、ずっと友達だと思っていたから」

私の言葉にセベクの表情が一瞬にして頼りないものになった。顔から赤みも引いていく。あからさまなセベクの態度に罪悪感を抱きつつも、だけど、中途半端な返事をセベクのためにもするわけにはいかなかった。

「もう少しだけ、時間をくれる?セベクのことをちゃんと知って、好きになって、それから返事したいの」

私の返事にセベクが考えるように瞼を伏せる。数秒後、再び瞼を開けたセベクは、力なく笑って頷いたのだった。

2023.03.07