Bookso beautiful yet terrific.

 今日は3月14日、ホワイトデーだ。先月、私がお世話になっている人達や貴銃士達にチョコレートを配ったおかげで、今日は色んな方達から歩くたびにお返しを貰っていた。
 そんなこんなで1日が終わり、寮の自室に戻ってしばらく経った時だった。コンコンと控えめなノックの音が鳴り、扉の向こうから声をかけられる。私は鍵を開けっぱなしだったことを思い出して、どうぞと返した。

「悪いな。疲れてんのに」

そう言いながら入って来たライク・ツーに私は緩く首を横に振る。

「ぜんぜん平気だよ。来てくれて嬉しい」

「それ。他の奴等にも言ってないだろうなあ」

私の返しにライク・ツーが僅かに苦笑いを浮かべながら椅子に座る。私も2人分のティーセットを用意してライク・ツーの向かい側に座った。

「今日はホワイトデーだしな」

「うん。ライク・ツーからも素敵な贈り物をいただいて嬉しかった。ありがとう」

「まあ、その。気に入ってくれればそれでいい」

 私はライク・ツーから視線を外して、贈り物の方を見る。朝1番でやって来たマークスの次に、ライク・ツーからお返しをいただいた。ぶっきらぼうに渡してくる少しだけ照れた様子のライク・ツーの姿を思い出して1人勝手に笑った。

「何1人でニヤついてんの?」

すぐに私の様子に気づいたライク・ツーがじとりと私を見る。
 私が笑いながらライク・ツーに視線を戻すと、ライク・ツーの表情が固いものに変わった。

「今日、ホワイトデーだからさ。あいつの、代わりで悪いけど」

 そう言ったライク・ツーが無造作に頭をかいた。

「おまえ等を知る士官学校の生徒が話してるの聞いたんだよ。バレンタインデーとホワイトデーの日は、2人で夜通し女子会してるってさ」

ライク・ツーの言葉に、私は昨年までのバレンタインデーとホワイトデーを思い出した。当時の私とヴィヴィアンは、バレンタインデーに限らずイベント事に理由をつけては2人で夜通しお茶会をしていたのである。
 つい、私は口を噤む。ヴィヴィアンとの思い出を忘れたいわけではないが、今はまだ思い出すだけでつらい。だけど、そんな私の姿を一瞥したライク・ツーが、ぶっきらぼうに言ってのけた。

「つーわけで。俺が、その女子会ってやつに付き合ってやるよ」

ふいっとライク・ツーの視線がそっぽを向いた。私は黙ったままライク・ツーの顔を凝視する。でも、段々と意味を理解してきて、私は力なく笑ったのだった。

「それじゃあ。お言葉に甘えて」

 あいつの代わり。ライク・ツーはそう言うけど、ライク・ツーはヴィヴィアンの代わりにはなれない。ライク・ツーはヴィヴィアンの持ち物であって、ヴィヴィアンではない。
 それでも、今はライク・ツーの気遣いに甘えていたかった。理屈で納得できるほど、私は強くないから。

2023.03.14