Bookso beautiful yet terrific.

 ただれた関係騒動(?)から数日後。今日も士官候補生達の奇異の視線に晒されて過ごしている時だった。

「マスター。授業とやらは終わったのか?ん?」

すっと伸びてきた長い両腕に後ろから抱きしめられてしまい、私は思わず足を止める。選りに選ってこの場所が数ある教室が並ぶ廊下のせいで、嫌でも士官候補生達の注目を集めていった。

「終わったよ。だから、これから昼食に行こうと思ってたの」

「ほう。人間は空腹状態になると著しく戦闘力が低下するからな」

「それは今のスナイダーも同じだからね」

「ちっ。面倒だ」

「さて。では、この手を離しましょう」

私のお腹に回された両手を解こうとするけど、それを上回る力をスナイダーが加えてくる。そのまま、私の首筋に自らの額をぐりぐりと押しつけてきた。

「ちょっと!やめて」

「何故嫌がる?先日、もっと激しいことをした仲だろう?」

「そういうの本当にやめて!!!」

廊下に居合わせた士官候補生達が騒つく。私は、余計に誤解が積み重なったことに頭が痛くなった。

「おまえの嫌がる顔を見なくても想像できる。悪くない気分だ」

「さては、スナイダー。おもしろがってるでしょう?」

「さあ。どうだろうな」

くつくつと喉の奥を鳴らして笑うスナイダーのせいで、私の首筋から振動が伝わってくる。とりあえず、離れてくれないかなあと思いながら溜息を吐いた。

「こんにちは、マスター。あなたもこれから昼食ですか?」

 後ろにぴったりとくっついて離れないスナイダーに困り果てているところに、今度はエンフィールドがやって来た。当然、私の眉間に皺が寄っていく。

「そうなの。お昼ご飯を食べたいの。この人、何とかしてくれる?」

「ああ、もう。スナイダーってば。マスターを困らせて。仕方ない子ですね」

そう言いながら、エンフィールドが私との距離を積める。それから、スナイダーの手を離そうと握ったままだった私の両手を取り、自らの両手に重ねてみせた。

「3人一緒に食事しましょう。あなたが望むものなら、僕が何でも作ります」

するすると動いたエンフィールドの指が私の指と絡む。私は数回瞬きを繰り返してから、ハッとして目を逸らした。

「私、学食に行きたい気分なの」

「僕達と食事するのは嫌ですか?」

「そうじゃないけど」

「全てを曝け出しておいて、今更逃げるつもりですか?」

エンフィールドの口からとんでもない言葉が出た瞬間、その場に居合わせた士官候補生達がまたしても騒ついた。私が思わずエンフィールドをキッと睨むと、当のエンフィールドは優しく目を細めた。

「強気な目をしたあなたも素敵ですね」

私は言葉を失う。この場に、私の味方なんぞいないのだから。

「おい。話は終わったのか?」

 ようやく、私の首筋からスナイダーの顔が離れていく。しかし、がっちりと私の身体を掴んだ両手は離してくれそうにない。

「マスターとの話が尽きることなんてないよ。僕はずーっと、マスターとお話していたいし」

「ふん。だったら、さっさと場所を変えろ」

「それもそうだね。早く、マスターと2人きりになりたいし。あ。スナイダーもいるから3人きりってやつだね」

何故だろうか。目の前で繰り広げられている兄弟銃の会話に嫌な予感がした。不意に、私の耳元にスナイダーが近づく気配がする。思わずびくりと肩を揺らす私に、スナイダーは大層おかしそうに耳打ちしたのだった。

「今日はUL96A1とUL85A2も任務に出ていないからな。誰にも邪魔をされずにすむ」

ますます、私の眉間に皺が寄っていく。そんな私の様子をじっと見つめていたエンフィールドは、ふふふと笑いながら自らの額を私の額に甘えるように押しつけた。

「ああ、マスター。そんなに怯えた表情をしないでください。僕とスナイダーは、ただ、あなたと一緒にいたいだけなんです」

あまりにも近い2人に、一連の様子を眺めていた士官候補生達が隠し切れないほどさらに騒ついていった。
 そのおかげで、騒ぎを聞きつけた恭遠教官が即座にやって来ては、私からエンフィールドとスナイダーを引き離してくれたので助かったのだった。

2023.03.29