
Bookso beautiful yet terrific.
どうしようと思いながら、私はクローゼットの前で悩んでいた。まともなデートならばかわいいワンピースを着たいし、デートと言う名のアウトレイジャー討伐任務なら動きやすい服装または士官学校の制服でいい。というか、そもそも行き先を聞いてないのが問題だ。
私はベッドの上に散らばった服の上から寝転んだ。
「デートねえ。そういう経験なかったし。プライベートで出かけたのもヴィヴィアンとダンローおじさんだけだしなあ」
深々と溜息を吐いて目を瞑る。明日は、エンフィールドとスナイダーと3人でデートする日。それこそ恋愛経験のない私には、八九の言葉で言う無理ゲーというやつだろう。
「だと思った。どうせおまえのことだから明日のことで頭を悩ませてんだろ」
その言葉を聞いて瞼をあけると、そこには呆れた雰囲気を隠しもせず私を見下ろすライク・ツーの姿があった。
「ライク・ツー。デートのこと知ってたの?」
「エンフィールドとスナイダーが勝ち誇ったようにあっちこっちで言い振らすからな。おまえ。明日気をつけねえと、修羅場に巻き込まれるぞ」
「え?修羅場?」
「つーか。俺も認めてねえからな。あいつらとおまえが付き合うなんて」
ライク・ツーの眉間に皺が寄っていくので私は苦笑いを浮かべるしかない。
「正直、付き合うとかは分からないんだけど。恋ってやつはエンフィールドとスナイダーから教わって勉強中です」
「あいつらが?それって大丈夫なのか?」
「恋愛に関しては大先輩だって言ってたし」
「意味分かんねえ。あいつら銃じゃねーか」
ライク・ツーの顔がますます顰める。物凄く何か言いたそうのライク・ツーだったが、やがて、深々と息を吐いてから私に向き直った。
「で?決まってないんだろ?明日の服」
「え?ああ、うん」
「だったら、俺が選んでやるよ」
唐突にそう言ったライク・ツーが、私のクローゼットの中から勝手にワンピースを取り出して私に押しつける。次に、ベッドの上に散らばる中からジャケットを掴んで私に投げてきた。
「それで。靴はそこにある踵の低いやつな。鞄はそっちのショルダーバッグ。分かった?」
「う、うん!」
「化粧とヘアメイクは俺が明日やる」
「いいの?」
「朝6時に俺の部屋に来い。勿論、今選んだの全部着て準備してから来いよ。いいか?マジで気をつけて来い。他の貴銃士に見つかったらデートに行けなくなるからな」
目を丸くする私を気にせず。それだけ言い捨てたライク・ツーは、さっさと私の部屋から出て行ってしまった。
翌日の朝6時。私は言われた通り出かける準備を整えて、警戒しながらライク・ツーの部屋に向かった。すぐに扉を開いたライク・ツーは私を部屋の中に招き入れる。それから私を椅子に座らせて、テーブルの上にずらりとコレクションされた化粧品を使って私を着飾ってくれた。
「いいんじゃねーの。それじゃあ。楽しんで来いよ」
全てバッチリと決めてから、ライク・ツーにしてはとっても珍しく良い笑顔で私を見送った。
「そういえば、どうして私を手助けしてくれたの?」
その疑問に、ライク・ツーは大層意地悪く笑って答えたのだった。
「ちょっと。いや、かなーりムカついたからあいつらに嫌がらせしただけ」
「嫌がらせ?何それ?」
「行けば分かる。そうそう。おまえのバッグの中にお守り入れたから失くすなよ」
ライク・ツーの言葉の意味は、エンフィールドとスナイダーに会ってから知ることになった。
待ち合わせ場所に現れたエンフィールドとスナイダーは、意外にも軍服ではなく、私達人間が普段着るような洋服店で購入したものだった。しかも、2人とも背が高く、顔立ちも良いので、不覚にもときめいてしまった。
「てっきり。デートってアウトレイジャー討伐任務のことだと思ってた」
「は?おまえ達人間は任務がデートなのか?ん?」
「何故だろう。スナイダーに正論を言われると物凄く自分が駄目人間って言われてる気がする」
スナイダーの返しに私はつい苦笑いを浮かべる。そんな私をじっと見つめたエンフィールドはふわりと笑った。
「勘違いするあなたもかわいいですが、今日のあなたは一段とお美しいです。ええ!」
「思いっきりUL85A2の趣味というのは気に入らんがな」
スナイダーが鼻で笑ってから私に近づく。それから勝手に私のショルダーバッグを開けて中に手を突っ込み何かを取り出した。
「嫌がらせもしっかり用意してあるぞ」
そう言うスナイダーの手には銃弾があった。その弾は私がライク・ツーの部屋に行くまではなかったものだ。
「それって、ライク・ツーの弾じゃん」
驚いて目を丸くする私に、エンフィールドはあからさまに溜息を吐く。それからスナイダーの手から銃弾を取り上げて私のバッグの中に戻した。
「あまり羽目を外すなという忠告でしょうね。残念ですけど」
さて。とエンフィールドが私に向き直る。それから私に手を差し出した。
「行きましょうか。デートへ」
次に、スナイダーも私に手を差し出した。
「行くぞ」
差し出された二つの手を私は交互に見る。ちらりと2人の顔を見ると、有無を言わさない雰囲気を感じた。
「はい」
綻んだ顔を隠しもせずにそう返事した私は、差し出された2人分の手に自分の両手をそれぞれ重ねる。
こうして、私達は初めての任務ではないデートへ出かけるのだった。
2023.03.29