Bookso beautiful yet terrific.

 昼休みになった。エースとデュースとグリムは購買部にそれぞれ買い物に出かけてしまった。残された私は中庭のベンチに座り、2人と1匹が戻るのを待つことにした。だけど、何もせずにただ待つだけというのは正直暇だった。つい、短く息を吐いてしまう。さて、どう暇潰しをしようか考えた時だった。
 急に、私の目の前に緑の粒子が集まり、そこから眩い光を発したかと思えば見覚えのあるツノが目に入った。

「僕を呼んだな」

腕を組んで自信満々に言ってのけるツノ太郎の姿に、私は小さく笑った。

「呼んだような気もするし、呼んでないような気もするかも」

「僕にはおまえの心の声が聞こえたぞ。退屈だとな」

悪戯が成功したように目を細めて笑うツノ太郎に、意外とお茶目なところがあるんだなあと思う。それでも、私の持て余す暇潰しになってくれる人には変わりない。

「来てくれてありがとう」

「ああ。おまえは僕の友だから当然のことだ」

「ツノ太郎が友達でよかった」

ツノ太郎の気遣いが嬉しくて、どんどん顔が緩んでいく。そんな私をじっと見つめたかと思えば、ツノ太郎が急に首を傾げた。

「僕と話すのは好きか?」

「そりゃあ好きだよ。ツノ太郎のお話はどれも興味がそそられて楽しいからね」

ツノ太郎の目が丸くなった。一拍置いて、ツノ太郎の表情がいつもの余裕のあるものに戻った。

「ならば。おまえが望むだけ話をしてやろう」

 ツノ太郎がそう言った瞬間、パチンと指で弾く音がした。私の目が瞬きする間もなく世界がぐにゃりと歪む。そして、私が気がついた時にはディアソムニア寮の談話室に設置してある椅子に座っていた。

「え!?たった一瞬で!?」

「魔法が使える者には当たり前のことだ」

平然としながらツノ太郎がそう返してくるが、残念ながら魔法の使えない私には分からない話だ。

「さて。お茶会を始めよう」

ツノ太郎が指を鳴らすたびにティーセットが現れる。その光景に感嘆の声を上げながら、私はツノ太郎が繰り出す魔法に夢中になったのだった。
 エースとデュースとグリムに何も言わずにツノ太郎について来てしまったことを忘れて。

2023.04.06