Bookso beautiful yet terrific.

 ある日の放課後のことだった。今日は天気もいいし、せっかくだからおやつのフルーツサンドを外で食べようかなあと思いつつ、ランチボックスを入れたバスケットを持ちながら歩く。すると、植物園の入口で私のより遥かに大きなバスケットを持つジャックの姿を見つけた。

「ああ、監督生か」

「こんにちは、ジャック。植物園に用事?」

「用事というか、何というか、」

私の問いかけに、ジャックが自身の頭をかきながら歯切れの悪い返事をした。それに対して私が首を傾げたところで、植物園の入口の戸が勝手に開いた。

「遅いッスよ!ジャックくん。あれ?監督生くんも誘ったの?」

「いや。たまたまです」

「まあ、いっか。それよりも、あれ持って来てくれた?」

「無理言って厨房のゴーストに用意してもらったんだから感謝してほしいです」

「はいはーい。文句と請求額はあとで聞くから勘弁して。レオナさんがね!」

植物園の扉を開けた張本人であるラギー先輩と心底困った様子で溜息を吐くジャックの姿に、私はますます状況が読めず瞬きする。そんな私の様子に気がついたラギー先輩は、シシッと歯を見せて笑い、植物園の中へ入るよう手招きした。

「さあ、どうぞ!中でレオナさんがお待ちッスよ」

ラギー先輩の言葉に、ジャックが再度あからさまに溜息を吐いた。それから私に振り向き、先に行くよう促した。

「ほら。行くぞ」

「え?ああ、うん」

ジャックに促されるままに植物園に入り、そのあとにジャックとラギー先輩も入口を潜る。全員入り終えてからラギー先輩は植物園の戸を閉め、そして足早に先頭を歩き出す。次にジャックが進み始めるので、私も2人の背中を追った。
 いつもだったらサイエンス部の誰かしら活動しているはずの植物園には人がいる気配はない。そういえば、今日は緊急の職員会議があるとかで、部活動は休みだと朝のホームルームでクルーウェル先生に言われたことを思い出した。だから、本来部活に行っているラギー先輩とジャックも私の目の前にいるのだろう。
 しばらく歩いていると、広大な敷地の植物園の奥の方に芝生が一面に敷かれた場所に辿り着いた。そこには既にレオナ先輩がごろんと横になっている。

「レオナさーん!ジャックくんがおやつ持って来てくれたッスよ」

「あ?もうそんな時間か」

ラギー先輩の掛け声に反応したレオナ先輩は気怠るそうに身体を起こし、それから大きな欠伸を一つ溢した。そんなレオナ先輩に対し、ジャックは半分諦めたようにまた息を吐く。一方のラギー先輩は、レオナ先輩の側に置いてあったアウトドア用キャリーカートからいそいそと何かを取り出してみせた。
 ばさりと音を立てて芝生の上にレジャーシートが敷かれる。ラギー先輩はシートの上にいくつかの水筒と紙コップと紙皿を並べてから私とジャックに向き直った。

「ほらほら!ボーっとしてないで準備して」

その言葉を合図に、ジャックは自身が持って来たバスケットをシートの上に置き、私に振り向いた。

「ほら。おまえも食おうぜ」

もう、私にはきょとんとすることしかなかった。3人の男子生徒が緑溢れる植物園に集まってピクニックの準備をしている。いや、正しくは、レオナ先輩だけは準備が整うのを待っているだけだ。

「それにしても。かわいい女の子がいてくれてよかったッスね。男だけのピクニックとかむさ苦しいのなんの」

「後輩を呼びつけておいてむさ苦しいって、」

「だって実際そうじゃん」

悪びれずに言ってのけるラギー先輩に対し、ジャックの眉間に皺が寄っていった。

「3人でピクニックする予定だったんですね。あの。私、知らなかったとはいえお邪魔してしまいすみません」

「ピクニックなんてもんじゃねえよ。腹も減ったし、ただの暇潰しだ」

私の言葉にレオナ先輩が欠伸を溢しながらそう言った。それからレオナ先輩はせっせとお茶の準備をする後輩達に構わず、ジャックが持参したバスケットの中から勝手にサンドイッチを取り出して大きな口を開けてがぶりと噛みついた。ちなみにそのサンドイッチ、チキンとチェダーチーズとベーコンとエッグとハンバーグのパティを挟んだものだった。ほぼ肉サンドだ。

「そういえば。おまえもピクニックに行く気だったんじゃないのか?無理やり連れて来て悪かったな」

レオナ先輩が食べるボリューミーなサンドイッチをついつい眺めているとジャックに声をかけられた。

「いいえ。寧ろ、誘ってくれてありがとう。私も天気がいいから外でおやつ食べたいなあと思っていたところだったしさ」

そう返しながら私は自分が持っていた小ぶりのバスケットをシートの上に置き、中からフルーツサンドイッチの入ったランチボックスを取り出してみせた。

「よかったら、これも召し上がってください。購買部で買ったものですが」

「え!?いいんスか!?ラッキー。残ったら寮に持って帰ろーっと」

いつもの調子で言ってのけるラギー先輩に私は小さく笑う。ジャックはまた溜息を吐いてから、私のフルーツサンドに手を伸ばした。

「それじゃあ。遠慮なく。おまえもそっち食えよ」

ジャックが示す先にはボリューミーサンドがたくさんあった。そのボリューミーサンドをレオナ先輩が何食わぬ顔してがっつりと食べて進めているが。

「ありがとう。いただきます」

「残ったら持って帰って食え」

私の顔も見ずにぶっきらぼうに言うレオナ先輩だけど、確かに気遣いは感じた。
 私は、ボリューミーサンドの一つに手を伸ばし、口を開けて噛みついた。そんな私の姿を、レオナ先輩とラギー先輩とジャックが凝視してから、3人で顔を見合わせて頬を緩ませてしまう。いつになく仲の良いサバナクロー寮のみなさんに、今日の私は首を傾げるばかりだった。

2023.04.08