Bookso beautiful yet terrific.

 アズール先輩とリドル先輩と話してから、気持ちが晴れた。アズール先輩とリドル先輩と別れたあと、私は勢いそのままにジェイド先輩とフロイド先輩を探す。そして、2人で仲良く話しながら中庭を歩く姿を見つけた。

「あの!ジェイド先輩!フロイド先輩!」

何とか追いついて2人を呼ぶと、ジェイド先輩とフロイド先輩は揃って私の方を振り向いた。それからそっくりな顔で頬を緩ませた。

「おや。そんなに息を切らせて、どうしましたか?」

「小エビちゃんってば、かわいいねえ。俺とジェイドに会いたくて走って来たの?」

先に、長い足で私との距離を詰めたジェイド先輩が私の右の頬に唇を押し当てる。ジェイド先輩が離れたのを見計らってからフロイド先輩が私の左の頬に口付けた。途端に、私の顔が熱くなる。だけど、今日はそれでドキドキして終わりというわけにはいかなかった。

「はい。お2人と話したくて来ました」

 私は自分の両手をきゅっと重ねるように握る。2人をこれまで以上に傷つけるかもしれない。怖くても、今の気持ちを正直に言おうと顔を上げた。

「私は、ジェイド先輩のことが好きです。だけど、同じくらいフロイド先輩のことが好きです」

私の言葉に、ジェイド先輩とフロイド先輩がお互いに顔を見合わせる。それから私に視線を戻し、続きを促すようにそれぞれ頷いてみせた。

「ジェイド先輩は最初の一口を全て欲しいと言い、フロイド先輩はジェイド先輩の次でいいと言ってくれました。でも、私には、どちらかが最初でどちらかが次と決めることができません。それだけ、お2人のことが好きなんです」

だから。と、私は繋いだ手に力を込める。震えそうになる唇をなんとか動かして笑ってみせた。

「ジェイド先輩の思う最初の一口を差し上げることができないし、初めて見る何かの魔法をフロイド先輩とやってみたい。私は1人しかいないから、全てを平等に2人にしてあげられません。それでも、」

それでも。

「こんなに欲張りな私を、好きになってくれますか?」

 私の問いかけに、ジェイド先輩とフロイド先輩が固まった。一拍置いて、2人して吹き出すように笑った。ジェイド先輩は口元に手を当てて笑い、フロイド先輩はあどけない表情で笑った。

「どうやら僕達。ずいぶんと彼女のことを追いつめていたようですね」

「追いつめすぎて、小エビちゃんが壊れなくてよかったあ」

「僕は彼女が壊れても気にしませんけどね。ずーっと大事にしますので」

「うっわ。ジェイドの悪いくせじゃん。ジェイドってガキの頃から、お気に入りのおもちゃが壊れてもずーっと大事に持ち歩くもんねえ」

「それだけ僕の愛情が海よりも深いということですよ」

目の前で繰り広げられる少し不気味な感じの会話に私は苦笑いを浮かべることしかできなかった。
 ふと、ジェイド先輩とフロイド先輩が私に向き直る。それから2人して私の身体をぎゅうと抱きしめたのだった。

「愛しています。末永く、よろしくお願いいたしますね」

「小エビちゃん、だーいすき。人魚を虜にさせたんだから、途中でやっぱり無理とか言わないでよね」

 ジェイド先輩とフロイド先輩の言葉に噛み締めるように頷いてから、私は2人の背中に両手を回して抱きしめ返した。ありったけの好きという想いを込めて。

2023.04.10