
Bookso beautiful yet terrific.
自意識過剰かもしれないが、最近、誰かによく見られている気がする。特に視線を感じる場面は、お手洗いに行く時や、お風呂に入っている時だと思う。そういえば、学園長が特別に用意してくれた女子更衣室を使う時も視線を感じる気がする。
「そうか。人の子が思い悩む理由はそういうことだったのだな」
ある日の放課後。オンボロ寮の前庭に設置した折り畳みテーブルにティーセットを広げて、それぞれ椅子に座ってティータイムを愉しんでいる時に私は世間話程度にツノ太郎に話した。私の話を聞いたツノ太郎は大層綺麗な顔を歪めてみせた。
「僕の友の心を傷つけるとは。絶対に許すものか。奴等にはきつくお灸を据えてやらねば」
「お灸って。別に何かされたわけでもないし、大丈夫だよ。スカートはよく捲られるけど。でも、心配してくれてありがとう」
「おまえは優しすぎる。不快なことをされればやり返すべきだ」
「やり返すほどのことかなあ」
私がうーんと首を捻ると、ツノ太郎はますます顔を顰めていく。しかし、何かに気づいたらしくツノ太郎はハッとした表情を浮かべた。
「僕に良い考えがある」
そう言いながら、ツノ太郎は自らの指を鳴らした。その瞬間、私の身体を緑色の粒子が包んだ。
「おまえに贈り物を授けよう」
突然のことにぱちぱちと瞬きする私に、ツノ太郎は勝ち誇る表情を浮かべてみせたのだった。
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監督生との何気ない会話で、エースは監督生が覗きや悪戯の対象にされていることを知った。確かに、全寮制の男子校に魔法も使えない愛らしい少女が在籍するというのは思春期の野郎どもに格好の餌食にされるだろう。
「覗かれても、別に困るわけじゃないからいいよ。男子校にいる時点で覚悟はしてるから。でも、お手洗いとかお風呂の時は流石に嫌だなあ」
当の監督生は、現状に嘆きはするが後々のことを思うとめんどくさがって真剣に対処しなかった。そんな監督生の代わりに、監督生のことを心底心配するエースはデュースと一緒に学園長やクルーウェル先生に監督生の件を現在進行形で相談している。矢先のことだった。
それは唐突に起きた。エースとデュースが監督生の例の件について廊下で話していると、血相を変えた上級生が廊下のど真ん中で倒れた。
「そ、そんな。お、俺は、」
みんな何事かと上級生を見ると、上級生は顔面蒼白のまま言ってのけた。
「マレウス・ドラコニアのパンツを見てしまった」
は?とエースとデュースを始め廊下に居合わせた生徒達が顔を顰める中、上級生は力尽きて倒れた。その後ろから、エースとデュースの友人である監督生が溜息を吐きながらやって来た。
「ねえ聞いてよ、エースとデュース。私、さっき知らない先輩にスカート捲られて下着を見られたんだけど。しかもさ。その人、勝手に私のスカートの中を覗いたくせに、この世の終わりみたいな悲鳴を上げて逃げて行ったの。失礼しちゃうよねえ。悲鳴を上げたいのはこっちだよ」
監督生の言葉に、エースとデュースはぽかーんと口を開けながら、廊下に倒れ込む上級生を見つめたのだった。
つまり、マレウスが監督生にかけた贈り物の正体はこういうことだった。
監督生に不埒なことをしようとした輩には、監督生がマレウス・ドラコニアに見えるよう魔法をかけたのである。例えば、監督生の制服のスカートを覗いた生徒は、その瞬間相手が監督生ではなくスカートを履いたマレウス・ドラコニアの姿に見えるのである。僕のスカートの中に何か用か?と女物の下着を履いたマレウスにそう言われるのだ。
マレウスの贈り物のおかげで、監督生の入浴中を覗いた輩も倒れた。裸で湯船に浸かる監督生の姿を目に焼きつけようと何処ぞの学年の男子生徒がオンボロ寮内の浴室を窓から覗くと、そこにはバスタオル1枚で仁王立ちするマレウス・ドラコニアがいたのである。
他にも、邪な気持ちを持った面々がお手洗いに行く監督生や更衣室に着替えに行く監督生を追いかけると、当然、行く先々にマレウス・ドラコニアが現れる。僕を呼んだな?とあちこちマレウスが現れれば命がいくつあっても足りない。
結果的に、監督生に不埒なことをする輩はいなくなった。何故なら、誰も好き好んでマレウス・ドラコニアにセクハラしたいわけではない。あのマレウスに、僕の身体に興味があるのか?えっち♡と言われたら色んな意味で卒倒する。
晴れて事件解決してから数日後。自分にそんな魔法がかかっているとは全く気づいていない監督生はエースとデュースに向かって暢気に笑って言うのだった。
「気がついたら変な視線も感じなくなったし、スカートを捲られることもなくなったの。心配してくれてありがとう、2人とも。そうだ!ツノ太郎にも、もう大丈夫だよって伝えに行かないと」
ふふふと頬を緩める監督生の姿に、エースとデュースはお互いに顔を見合わせる。どういうわけか邪な気持ちはないのに、少しでも監督生のことをかわいいと思った瞬間、監督生がマレウス・ドラコニアに見えてしまうのだから、エースとデュースは複雑な気持ちになった。
何にせよ、危険な橋は渡らないべきだ。エースとデュースはそう決めたのだった。
2023.04.29
Danger|女監督生受け版ワンドロワンライ