
Bookso beautiful yet terrific.
錬金術の授業が終わり、いつも通り後片付けをしている時だった。
本日の授業で使った薬品を棚に戻しながらエースは何食わぬ顔して口を開いた。
「クルーウェル先生に質問でーす!麓の街でデートするならお勧めの場所は何処ですか?」
エースの質問に、黒板にびっしりと書いた数式を消していたクルーウェル先生があからさまに顔を顰めながらエースに振り向く。それは私も同じで机の上を雑巾掛けしていた手を止めてエースに視線を向ける。残った材料を片付けていたグリムも、実験器具を元あった場所に戻していたデュースも、あんぐりと口を開けてエースを見た。
「仔犬。真面目な話をしているのか?」
「大真面目っす。で?教えてくれませんか?」
クルーウェル先生に向き直りながら、いつもの調子で言ってのけるエースの姿にクルーウェル先生が少しだけ考え込む素振りを見せる。それからクルーウェル先生は再度口を開いた。
「デートに誘うレディがどういったものを好むかによるな」
「そうだなあ。どちらかというと、気取らない雰囲気の店が好きだと思う。な?デュース?」
エースの視線がデュースに向き、それにつられるようにクルーウェル先生もデュースを見る。突然振られた話題にデュースは目を丸くしたかと思えば、一気に顔を耳まで赤く染めていった。
「おまえ!!!何言って、」
「何?照れてんの?デュースだってデートに誘うの賛成してたじゃん」
「な。な、な、な!?」
まともな言葉にならず口をぱくぱく動かすだけのデュースの姿にエースは呆れた表情を浮かべる。そのエースの視線が移動し、今度はグリムに向いた。
「ほら。おまえも考えて。どうしたら喜ぶか」
「喜ぶ、物?なんだゾ?」
「物でもいいよ。何かないの?俺達よりもずっと長い時間一緒にいるんだからさ」
グリムがうーんと首を傾げる。私はそれを横目に、突拍子のない質問を最初に言い出したエースに尋ねた。
「ねえ。何の話をしてるの?」
私の質問にエースが表情を変えないまま間髪入れずに返してきた。
「おまえをデートに誘う話してるんだけど」
一拍置いて、私はぱちぱちと瞬きした。そして、ようやく意味を理解した私は小首を傾げた。
「私を、デートに誘ってくれるの?」
「そう!俺と、そこの恥ずかしがり屋のデュースと、おまえの親分とデートするの。勿論、行くだろ?」
強気のくせに、段々と私から視線をずらしていくエースの姿に気恥ずかしさが滲み出ていた。
ふと、クルーウェル先生が思い出したように口を開いた。
「仔犬どもがデートに行くなら、麓の街にあるアウトドアパークに行って来るといい。おまえ達のように遊びたくてたまらない仔犬がじゃれる巨大なアスレチックがある」
クルーウェル先生からのお勧め場所を聞いた瞬間、デュースとグリムの目がきらきらと輝いた。
「アウトドアパーク!!!それならみんなで楽しめるな」
「オレ様!エースとデュースよりも早くアスレチックを制覇するんだゾー!!!」
行く気満々の様子のデュースとグリムの姿に、エースがやれやれといった感じで首を緩く横に振った。
「おまえらがはしゃいでどーすんの?これ、デートってこと忘れてない?」
「でも。アウトドアパーク、私も興味ある。行ってみたいと思うよ」
どんなアスレチックがあるのだろうと考えるだけで心が弾んだ。そんな私に視線を向けたエースは、眉を下げて笑ってみせた。
「おまえがいいならそこにするわ。それじゃあ、俺達とデートに行ってくれますか?レディ?」
エースからの誘いに、私は笑って頷いたのだった。
「勿論。エスコートはよろしくね」
2023.05.12
企画「ゆあまい2nd」様のフリーイベントに参加させていただきました。