Bookso beautiful yet terrific.

 空を見上げると、箒に跨ったクラスメイト達が思い思いに飛んでいる。エースは器用に、デュースは真剣に、グリムは辿々しいが、それはそれはみんなが高く飛んでいる。

「おーい!監督生!俺の後ろに乗りなよ」

「な!?監督生は僕の後ろに乗るんだぞ!!!」

「ノン!彼女の御身は私に委ねるのさ」

 飛行を終えて地面に着地したクラスメイト達が口々にそう言いながら私の元へやって来た。きっと、魔力が無く空を飛べない私を気遣ってのことだろう。

「お気遣い、ありがとう。でも、2人乗りは危ないし大丈夫だよ」

私がクラスメイト達に礼を述べると、クラスメイト達が不満そうにお互いの顔を見合わせる。それから、絶対に落ちないから心配するな!の一点張りだった。
 あんまりにも、こっちの箒に!この箒に!と誘われるものだから、私は軽い気持ちで誰かの箒に乗せてもらおうかなあと考え始める。ちょうどその時、空から物凄い勢いで何かが降下してくる。それは私とクラスメイト達の間に割って入るように着地した。

「こんにちは!監督生さん」

 目の前に現れたオルトくんが、瞬時に私に向き直って挨拶する。そのまま私に自らの右手を差し出した。

「迎えに来たよ」

「迎えに?」

ぱちぱちと瞬きする私にオルトくんが首を縦に振ってから笑ってみせた。

「君は空が飛べないでしょう?だからね。僕と一緒に飛ぼうよ」

オルトくんの差し出した右手が私の左手を取る。そして、流れる仕草で私の指先にマスク形のパーツ越しに口付けた。

「ね?いいでしょう?」

私の指先を口元に当てたまま甘えるように尋ねてくるオルトくんの姿に私は固まる。思わず、視線を右往左往させていく。そんな私に、オルトくんがさらに続けた。

「お姫様と一緒に空を飛ぶことが許されるのは王子様だけだよ」

私の目をじっと見つめながら言ってくるオルトくんに対し、私はもういっぱいいっぱいだった。

「はい。その。お願い、します、」

「うん!喜んで!」

私の言葉に無邪気に笑って返事したオルトくんは私の指先にもう一度口付ける。それから私の左手を離し、私の膝裏と背中に両手を回して軽々と抱きかかえた。

「それじゃあ!行こう!しっかり掴まっててね」

「何処に掴まればいい、かな?」

「いつもするみたいに僕の首に両腕を回してくれると嬉しいな」

いつもする。その単語に私の顔が耳まで赤く染まる。それを分かってるくせにオルトくんは分からないなあと言わんばかりに小首を傾げてみせた。

「あれ?どうしたの?いつも僕とキスする時みたいに、ぎゅうと腕を回してもいいんだよ?」

こんなことを言われてしまえばもう顔から火が出そうだ。というか、先程から私達の会話を目の前でガン見してくるクラスメイト達の視線が痛い。私は恥ずかしさのあまり、オルトくんの細い首に両腕を回して赤くなった顔を隠すようにそこに顔を埋めるしかなかった。

「素直でお利口さんだね。かわいい」

クスッと笑ったオルトくんが、私の髪に口付けたのは感触だけで伝わる。これ以上は、私の心臓が保たない。

「あ!」

 急に、オルトくんが声を上げた。

「というわけだから。僕だけのお姫様を、勝手に箒に乗せないでよね」

オルトくんの言葉を最後に、地面に何かが崩れ落ちていく音がいくつも響いた。だけど、私にはその何かを確かめられる余裕なんぞなかったのだった。

2023.05.13
飛翔|女監督生受け版ワンドロワンライ

[おまけ]
遠くから見てたマブ達と親分
エース「あいつらまたやってるし。見せつけられたせいでみんな石化してんじゃん」
デュース「仲がいいのは分かるけど。その。目のやり場に困るというか何というか」
グリム「牽制ってやつなんだゾ。オルトのやつ。何処でも子分のこと見つけてベタベタするしオレ様見てらんねーんだゾ!!!」